「jMorp」のメタボローム解析、従来の5倍に
東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)は、日本人多層オミックス参照パネル(jMorp)のメタボローム解析人数を、従来の5倍以上の5,093人に拡張したと発表した。参照パネルとしての信頼性が大幅に向上した。
画像はリリースより
がんや生活習慣病などの疾患のバイオマーカーとなる血液中の代謝物やタンパク質の種類や濃度(オミックス情報)は、各個人で異なり、また同一人でも加齢や疾患の有無で変化するため、正常値の設定が非常に困難とされてきた。これまで日本人のオミックスとゲノムを関連付けた網羅的な大量のデータは存在せず、両者の詳細な関係は解明されていなかった。
現在、世界中の健康調査において、さまざまな生体分子を網羅的・包括的に解析する方法としてオミックス解析が導入され始めており、ToMMoも2015年にjMorpを発表。また、2016年には解析数を当初の約2倍の1,008名に拡張するとともに代謝物間の相関情報も加えた拡張版jMorpを公開していた。
年齢別の代謝物濃度分布・ネットワーク解析結果を追加
今回のオミックス情報の拡張では、解析対象数を大幅に拡張するとともに若年齢層をさらに重点的に解析することで、より高精度な標準パネルを構築することに成功。また、今回メタボローム解析したjMorp対象者5,093人は、ほぼ全てゲノム解析が終了しており、詳細な関連解析が実施できるという。これにより、今後の症例対照研究における正常対照としての活用範囲が大きく広がると共に、遺伝要因や環境要因による影響を高い精度で検出できるようになるとしている。
今回は血液中の代謝物の量が年齢によってどのように変化するか、詳細な情報も公開された。ヒトの血液成分は加齢によって変化するため、各項目を検査する際はその人の年齢にあった基準値と比較する必要。今回、jMorpは血液中の代謝物について詳細な年齢別分布を解析し一般に公開することで、各年齢層における基準値を提供するという。
さらに、各代謝物の間の関係を解析するために、相関情報をネットワークのように表示するビューワーを新たに公開。表示する相関性の程度についても、ユーザが自由に設定できる仕組みにより、代謝物間のネットワークを容易に解析できるようになった。これにより、特定の疾患で増えることがわかっている代謝物と相関のある代謝物をjMorpで探すことで、新たな創薬ターゲット候補が見つかるかもしれない、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース