長期型LVAD装着までのつなぎとなる補助循環法として期待
国立循環器病研究センターは9月29日、体外設置型連続流補助人工心臓システム「BR16010」を開発し、重症心不全患者に対する補助循環(NCVC-BTD_01)のfirst in human試験を10月1日から医師主導治験として実施すると発表した。
画像はリリースより
劇症型心筋炎や急性心筋梗塞などを原因として全身状態が急激に悪化する心原性ショックの急性期治療では、まず薬物療法および大動脈内バルーンポンピング(IABP)や経皮的心肺補助(PCPS)などの循環補助を実施する。それでも回復が見られない場合は、短期使用を目的とした左室補助人工心臓(LVAD)を装着し、回復すればLVAD離脱、回復が見込めない場合は長期使用可能なLVADへ橋渡しされる。
長期型LVAD装着に当たっては心臓移植の登録が必要になり、登録のための手続きに1~6か月かかる。その期間、短期型LVADを用いて患者の循環を補助する必要がある。しかし、現在最も使用されている短期型LVADは20年以上前に開発されたもので、流量不足や駆動装置が95kgと大きいこと、流量計がないことから使用しにくいことが指摘されている。また、PCPSの回路を用いて循環補助を行うこともあるが、6時間以上の使用に保険が適用されないことや1週間以内に血栓を発症して脳血管障害などの合併症が頻発するという課題がある。このため、長期型LVAD装着までのつなぎに耐えうる新しい補助循環法の確立が求められていた。
従来の治療法では救命困難な重篤な心不全や心原性ショック患者を対象に
そこで国循移植医療部の福嶌教偉部長と人工臓器部の巽英介部長らの研究チームは、ニプロ株式会社と共同開発を実施。30日間使用できる遠心型血液ポンプと血液を取りこんで再度体内に送り込むための特殊なチューブ(送血・脱血カニューレ)、回路チューブを組み合わせたBR16010を開発した。
BR16010の血液ポンプは、新たに開発された動圧浮上方式非接触回転型で、体外設置型の遠心型血液ポンプとしては世界初かつ唯一のもの。また、駆動装置のモーター部分は650g、コンソール部分は8kgと小型化・軽量化に成功し、装着・移動が容易になった。ポンプ内部は特殊なコーティングがされ、血栓ができにくい工夫がされているという。
今回の治験は、従来の治療法では救命が困難なほど重篤な心不全または心原性ショックの患者を対象に、最長30日間、同じ回路で循環補助を行うことで救命率の向上につながるかを確認する。対象症例数は9例、症例登録期間は2017年10月1日から2018年8月31日まで。この治験によりBR16010の効果が確認できれば、重篤な患者の救命に寄与する新しい機器となることが期待される。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース