■広告宣伝活動に指針策定へ
厚生労働省は9月29日、バイエル薬品が経口抗凝固薬「イグザレルト」など4品目で報告義務対象の副作用86症例を把握していたにもかかわらず、期限内に報告しなかったとして、同社に対して医薬品医療機器等法に基づき文書で改善指導を行った。今月中に再発防止策などを記載した改善計画をまとめて提出し、提出後1年間は四半期ごとに計画の実施状況を報告することを求めた。さらに、バイエル社が関与したアンケート調査論文を活用した「イグザレルト」の広告活動について、「不適切な広告活動を行った」として口頭で指導を行った。厚労省は、バイエル社に再発防止策をまとめるよう求めると共に、類似事例の発生防止を目的に、製造販売業者の広告プロモーション活動に関するルールを定めたガイドラインを策定する考えを明らかにした。
行政指導の対象となったのは9月29日までにバイエル社の調査で判明した86例の副作用漏れ。最も多かったのは「イグザレルト」で77例、次いで「バイアスピリン」5例、抗癌剤「スチバーガ」5例、「ネクサバール」1例で、これらの副作用を把握していながら、最長で約4年11カ月報告していなかった。
厚労省は、アンケート調査で把握した有害事象も中央管理統括部門に報告することをバイエル社員が認識していなかったこと、MRなど安全性情報を常に入手する社員のみを自己点検の対象とし、マーケティング部門の社員が含まれていなかったことなどを重く見て、薬機法の副作用報告義務に違反したと判断。バイエル社に文書で改善指導を行った。
安全性情報に接する全社員を対象とした教育訓練を定期的に実施すること、コンプライアンス対策を含めた是正措置、再発防止策に関する改善計画を1カ月以内にまとめて厚労省に提出することなどを求め、計画提出後1年間は四半期ごとに実施状況を報告するよう指示した。
また同日、改めて製造販売後安全管理業務に関する社内体制を再確認し、副作用情報の取り扱いに関する業務が適切に維持されているか徹底的に確認するよう周知を求める通知を都道府県に発出した。
バイエル社をめぐっては5月に厚労省から報告命令を受けて行った調査で、4品目85例の副作用を報告していなかったことが公表されていたが、その後、新たに「バイアスピリン」1例が明らかになり、今回の行政指導となった。
さらに厚労省は、バイエル社が関与した医師によるアンケート調査論文を活用した「イグザレルト」の広告活動について、「適正な広告プロモーション活動の観点から不適切と思われる点がある」として口頭で指導を行い、バイエル社に再発防止策の策定を求めた。
アンケート調査論文の集計作業がずさんで、副作用の数値に誤りがあったこと、医師が論文を取り下げた後も利用していたことなどを理由に挙げたものの、「薬機法の虚偽・誇大広告規定には違反しない」と判断。行政処分ではなく口頭での指導にとどめた。厚労省は、類似事例の発生防止を目的に製造販売業者の広告プロモーション活動に関するルールを定めたガイドラインを策定する考えだ。
今回の行政指導を受け、バイエル社は「今回の問題を重く受け止め、深く反省している。製薬企業としての重責を自覚し、再発防止と法令遵守体制の強化に真摯に取り組む」と謝罪のコメントを発表。11月に全社員を対象とした再発防止に向けた5日間の包括的教育研修プログラムを行う考えを表明した。