皮下脂肪細胞が巨核球を経て血小板に分化することを発見
慶應義塾大学は10月2日、皮下脂肪細胞が巨核球を経て血小板に分化することを発見し、試験管内で安定的に皮下脂肪組織から血小板を大量に創製する培養技術を確立したと発表した。この研究は、同大医学部臨床研究推進センターの松原由美子特任准教授らと、神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)との共同研究によるもの。
画像はリリースより
ヒト皮下脂肪組織には、間葉系のさまざまな種類の細胞へ分化することができる脂肪前駆細胞(脂肪幹細胞/間葉系間質細胞/間葉系幹細胞)、Adipose-derived Mesenchymal Stem/stromal Cell(ASC)が含まれる。松原特任准教授らは、試験管内で特定の条件下で培養することで、ASCが巨核球を経て血小板に分化することを世界で初めて発見。さらに、大量培養に適した性質を持つ間葉系幹細胞/間質細胞株(Adipose-derived Mesenchymal Stem/stromal Cell Line=ASCL)を、ヒト皮下脂肪組織から精製・株化する独自技術の開発に成功したという。
血小板輸血代替と創傷治癒促進の実用化を目指す
ASCLは、国際細胞治療学会が定める間葉系幹細胞の定義を全て満たしており、すでに医療応用されている他の間葉系幹細胞と同様、高い安全性を有しているという。その一方、従来の間葉系幹細胞の採取方法では、完全に均一な性質を持つ細胞集団を得ることが困難だったが、ASCLはこの課題を克服。さらに、ASCLは、凍結・融解が可能で増殖能も高く、増殖させても特性が変わらないという性質をも併せ持っているという。そのため、ASCLから血小板(ASCL由来血小板様細胞、ASCL-derived Platelet Like Cells=ASCL-PLC)を安定的に大量生産できることが明らかになった。この基盤技術は、医療応用上の優位性を持っており、ASCLを特定の条件で培養するだけで、遺伝子を外から導入するステップの必要ないとしている。また、ASCL-PLCの医療応用として、血小板輸血代替と創傷治癒促進に対して開発を行っているという。
また、研究成果の早期実用化を目的として、株式会社AdipoSeedsが2016年7月に設立されている。松原特任准教授らの研究グループが、引き続き、研究開発を同大学内で実施する一方で、AdipoSeeds社では、知財管理、海外マーケティング調査等を行い、血小板輸血代替と創傷治癒促進の医療用途による実用化を目指すとしている。
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・慶應義塾大学 プレスリリース