長期血行動態と治療後の経過を検討
東北大学は9月26日、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対する肺動脈バルーン形成術の長期の血行動態と治療後の経過を検討し、同治療法が効果的かつ高い安全性を示したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明教授、杉村宏一郎講師、青木竜男院内講師らの研究グループによるもの。研究成果は「European Heart Journal」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
国の指定難病であるCTEPHは、体を動かす時に息苦しく感じる・すぐに疲れるといった症状が現れる難治性の疾患で、日本国内での患者数は2,140人(2013年度)と報告されている。近年、従来の手術が適応できない“末梢型”CTEPHに対し、肺動脈バルーン形成術が行われており、肺動脈圧や運動能に対する短期的な改善効果が報告されている。
初回術後の5年生存率98.4%
研究グループは、東北大学病院循環器内科において“末梢型”CTEPH患者に新しい治療法であるバルーン肺動脈形成術を適用し、その治療効果を検討。2009年7月から2016年10月までの間に初回の肺動脈バルーン形成術を施行した84名のうち、治療が完了した77例を対象に、治療効果の指標である平均肺動脈圧6分間歩行距離などを計測した。その結果、平均肺動脈圧は38±10mmHgから25±6mmHgに、6分間歩行距離は380±138mから486±112mにそれぞれ改善。また、これらの改善は慢性期においても持続していた(追跡期間43±27か月)。
合併症については、84例(424セッション)中、血痰を14%(60セッション)で認め、マスク式の人工呼吸器は8%(33セッション)で施行。経口挿管による人工呼吸器管理を必要としたのは0.2%(1セッション)であり、手技に関連した死亡はなかった。
さらに、初回肺動脈バルーン形成術施行後の5年生存率は、98.4%(N=77)であり、肺動脈バルーン形成術が施行可能となる以前の患者(未施行群)の5年生存率(77.5%)と比較すると、肺動脈バルーン形成術が有意に予後を改善していることが明らかになった。これらの結果により、CTEPH患者において、肺動脈バルーン形成術は安全に施行でき、肺動脈圧と運動能を改善し、治療後の長期予後も改善することが示されたとしている。
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・東北大学 プレスリリース