ビタミンK拮抗薬服用中患者の出血傾向の抑制が可能に
CSLベーリング株式会社は9月15日、ビタミンK拮抗薬(ワルファリン等)療法時の出血傾向を抑制する静注用人プロトロンビン複合体製剤「ケイセントラ(R) 静注用 500、1000」(一般名:静注用人プロトロンビン複合体製剤)の発売を発表。同日、記者発表会を開催し、九州医療センター 脳血管センター部長の矢坂正弘氏がワルファリン療法時の出血傾向の実態やケイセントラの登場により期待される今後の治療環境について講演した。
九州医療センター 脳血管センター部長 矢坂正弘氏
日本において、心房細動に伴う心原性脳塞栓症や深部静脈血栓症発症後の肺塞栓症など、さまざまな理由により、約125万人の患者が血栓の形成を抑えるために、ビタミンK拮抗薬を服用している。ワルファリンは肝臓における血液凝固因子の生成に寄与するビタミンKを拮抗阻害することにより、血栓の形成を抑制している。
ワルファリンを服用している患者では、重篤出血時や出血が予想される手術などの際に出血傾向になる。これまでは、ワルファリンの休薬やビタミンKの投与といった対応がとられてきたが、血液の凝固能を正常化するまでに半日以上を要していた。
PT-INR、投与終了後30分以内に1.3以下へ低下
ケイセントラは、日本初のワルファリン等のビタミンK拮抗薬療法時の出血傾向を抑えるプロトロンビン複合体製剤。2011年、日本脳卒中学会からの早期開発の要望により、医療上の必要性の高い未承認薬と認められ、開発が進められていた。
同剤は、血液凝固因子の第II、第VII、第IX、第Xを合わせた製剤であり、これらの凝固因子が高濃度に含まれるとともに、ビタミンK依存性の凝固阻止因子であるプロテインCとプロテインSが含まれている。これにより、ビタミンK拮抗薬の服用によって減少した血液凝固因子をすみやかに補充し、抗凝固状態を是正する。海外第3相臨床試験「3002試験」では、半数以上の患者に血液凝固の働きを見るための国際標準比であるPT-INRを投与終了後30分以内に1.3以下へ低下することが認められたという。
「ワルファリンは幅広い適応を持っているので今後も使われていくが、出血性合併症に注意しなければいけない」と矢坂氏。グローバル試験、日本国内での試験を経て、ケイセントラが保険適用となったことを受け、「ワルファリン療法時に大出血した人や緊急手術が必要な人の緊急是正にケイセントラが使えるようになり、非常に期待される」と、その役割の重要性を語った。
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・CSLベーリング株式会社 プレスリリース