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東アジアのピロリ菌CagAのみが保有するSHP2結合様式が胃がん発症を著しく促す-東大

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2017年09月25日 PM02:45

不明だったCagA間で発がん活性の違いが生じる構造基盤

東京大学は9月21日、ピロリ菌がんタンパク質「」とその発がん標的分子である「」間の複合体形成を担う結晶構造を解明し、日本を含む東アジアに蔓延するピロリ菌CagAのみが保有するSHP2結合様式を発見するとともに、その結合様式が胃がん発症を著しく促すことを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の畠山昌則教授、高エネルギー加速器研究機構の千田俊哉教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Cell Reports」に9月19日付けで掲載されている。


画像はリリースより

ほぼ全ての胃がんはヘリコバクター・ピロリ()感染を背景に発症し、その発がん過程にはピロリ菌が産生する病原因子CagAタンパク質が重要な役割を果たす。東アジア諸国(日本、中国、韓国)は世界的な胃がんの最多発地域として知られており、疫学調査から東アジアで見られるピロリ菌が保有する東アジア型CagAは、それ以外の地域で見られる欧米型(世界標準型)CagAに比べ、胃がん発症に、より深く関与することが指摘されているが、これら2種のCagA間の発がん活性に違いが生じる構造基盤は不明だった。

東アジア型、欧米型のSHP2に対して100倍以上高い結合能

研究グループは、表面プラズモン共鳴分析法を用いて東アジア型CagAと欧米型CagAとSHP2間の結合の強さを定量的に測定。その結果、欧米型CagAと比較し東アジア型CagAはSHP2に対して100倍以上高い結合能を示すことがわかった。この結合の強さを反映し、東アジア型CagAはSHP2の脱リン酸化酵素活性を著しく増強する一方で、欧米型CagAのSHP2活性化能は極めて弱いことが明らかになった。

次に、東アジア型CagAと欧米型CagAとSHP2間の複合体形成の構造基盤をX線結晶構造解析により三次元的に決定。結晶構造から、東アジア型CagAでは、Phe残基の側鎖がSHP2分子表面のくぼみにはまり込み、リン酸化チロシン依存的なCagA-SHP2結合を強く安定化するのに対し、欧米型CagAのAsp残基は、SHP2との結合安定化には全く寄与しないことを見出した。

さらにPhe残基による結合の安定化が発がんに関わるピロリ菌CagAの生物活性発揮に重要かどうかを検討。東アジア型CagAのPhe残基を欧米型 CagAが同部位に保有するAsp残基に置換した変異体を作製したところ、CagA変異体は著しいSHP2結合能の低下を示し、発がん関連生物活性も欧米型CagAと同等レベルにまで減弱したという。これに対し、欧米型CagAのAsp残基を東アジアCagAに特異的なPhe残基へと置換すると、SHP2結合能の増大とともに、CagAの発がん関連生物活性は顕著に増強されたという。

今回の研究で明らかにされたCagA-SHP2結合の分子構造学的な知見は胃がん発症メカニズムを科学的に理解するための基盤情報となり、さらには胃がんの予防や早期病変の治療といった今後の革新的な臨床技術の開拓に役立つことが期待される、と研究グループは述べている。

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