2,542例を従来療法群と強化療法群に割り付け
東京大学医学部附属病院は9月15日、2006年に厚生労働省の戦略研究の一環として開始した臨床試験J-DOIT3の主な解析結果を発表した。この研究は、同大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科の門脇孝教授、国立国際医療研究センター研究所糖尿病研究センターの植木浩二郎センター長らのグループによるもの。研究成果は、ポルトガル・リスボンで開催された欧州糖尿病学会(EASD)で発表され、英学雑誌「Lancet Diabetes & Endocrinology」にも掲載予定。
画像はリリースより
2型糖尿病は、心筋梗塞や脳梗塞といった大血管症や、慢性腎不全などの細小血管症といったさまざまな血管合併症を引き起こすことから、日本においても大きな社会問題となっている。しかし、どのような治療が2型糖尿病の合併症予防に有効かは、これまで十分にわかっていなかった。とくに、血糖に加えて、血圧や脂質も含めた統合的な治療をより厳格に行なうことが、実際に合併症を減らすことにつながるのかについては、明らかになっていない。
今回の試験では、全国81施設で2型糖尿病症例2,542例が参加し、ガイドラインに沿った治療を受ける従来療法群と、血糖値・血圧・脂質に対してより厳格な統合的治療(HbA1c6.2%未満、血圧120/75mmHg未満、LDL-コレステロール80mg/dL(冠動脈心疾患の既往がない場合)などを目標)を受ける強化療法群に割り付けられた。実際の治療状況としては、強化療法群と従来治療群の平均HbA1cは6.8%、および7.2%、平均血圧は123/71mmHg、および129/74mmHg、平均LDL-コレステロールは85mg/dL、および104mg/dL。両群とも体格指数は概ね横ばいだったという。
ガイドラインの治療目標値をより厳格に設定する可能性も
平均8.5年の治療により、強化療法は主要評価項目の心筋梗塞・冠動脈血行再建術・脳卒中・脳血管血行再建術・死亡を、統計学的に有意ではなかったものの19%抑制し、登録時の喫煙情報などの危険因子で補正すると24%有意に抑制。さらに事後解析を行なった結果、脳血管イベント(脳卒中・脳血管血行再建術)を58%有意に抑制したことがわかったという。また、副次評価項目のうち、腎イベント(腎症の発症・進展)も強化療法によって32%有意な抑制が示された。眼イベント(網膜症の発症・進展)についても、14%の有意な抑制が見られたが、下肢血管イベント(下肢の切断・血行再建術)については有意な差は認められなかったという。
今回の研究成果により、今後の国内外の糖尿病診療ガイドラインにおいて、治療の目標値をより厳格に設定する方向で、見直しが進む可能性があるという。また、介入終了後5年間の追跡研究が進行中で、今後長期的な治療効果も明らかになるものと期待される、と研究グループは述べている。
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・東京大学医学部附属病院 プレスリリース