社会保障審議会医療部会は15日、2018年度診療報酬改定の基本方針策定に向け、医療提供体制の観点からの検討をスタートさせた。主な視点のたたき台として、地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携、医療従事者の負担軽減と働き方改革などが示された。委員からは、病院経営が厳しさを増していることが訴えられたほか、診療報酬が複雑化していることに懸念が示され、簡素化を求める声が相次いだ。
この日の部会では、次期診療報酬改定の基本方針に向け、どこに住んでいても適切な医療・介護を安心して受けられる社会の実現として、地域包括ケアシステムの構築や医療・介護現場の働き方改革の実現などの基本認識を共有した。
猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は、病院経営が厳しくなってきていることを強調。その上で、「診療報酬改定のたびに報酬が複雑化し、難しくなっている。これ以上複雑化すると対応できなくなる」と述べ、診療報酬の簡素化を訴えた。山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)も、「診療報酬が複雑化して、患者も理解できなくなっており、国民からかけ離れたものになっている」と指摘、診療報酬の簡素化に取り組んでほしいと要望。さらに「どこに住んでいても安心できる医療・介護といっても本当に実現できるのか」と懐疑的な見方を示し、「できない地域もあり、格差が出てくる。そうした地域をどうしたら安心できる医療・介護を受けられるよう近づけることができるのか、国民に分かりやすく伝えてほしい」と述べた。
一方、楠岡英雄委員(国立病院機構理事長)は、「医療従事者の負担軽減が掲げられているが、特に医師の働き方改革は喫緊の課題」とした上で、「これまでの診療報酬では、業務の移管といっても患者に直結するものだけが評価されてきた」と指摘。医師事務作業補助者の働きが効果を上げていることを例示し、「タスクシフトしていく中で、診療報酬に直結しない部分の手当も考えてほしい」と求めた。