過去の大規模研究は欧米人が主な対象
理化学研究所は9月12日、体重調節に関わるヒトゲノム上の193の遺伝的変異を同定したと発表した。この研究は、理研の研究グループが、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構、国立がん研究センター社会と健康研究センターらと共同で行ったもの。研究成果は、国際科学雑誌「Nature genetics」オンライン版に掲載された。
画像はリリースより
肥満はさまざまな病気の発症リスク因子であり、その原因は食べすぎや運動不足だけではなく、遺伝的な影響も大きい。しかし、遺伝要因が体重の個人差をもたらす生物学的なメカニズムは、十分に解明されていなかった。
これまでに、世界では最大約34万人を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)が行われ、体重に影響すると考えられる100程度のゲノム上の感受性領域が同定されていたが、過去の大規模な研究は欧米人が主な対象だったという。
免疫細胞のリンパ球が体重調節において主要な役割
今回、共同研究グループはバイオバンク・ジャパンに参加した日本人約16万人の遺伝情報を用いてGWASを実施し、さらに欧米人約32万人で行われたGWASとのメタ解析を行うことにより、体重に影響すると考えられる193のゲノム上の感受性領域を同定。うち、112領域は初めて同定されたものだという。
また、組織特異的なエピゲノム情報とGWASの統合解析により、過去に報告されていた脳の細胞に加えて、免疫細胞のリンパ球が体重調節において主要な役割を果たすことを示す複数の遺伝学的な証拠を見いだした。さらに、GWASの結果を用いて、33の病気と体重の遺伝的な関わりを評価したところ、2型糖尿病や心血管病などの生活習慣病だけでなく、精神疾患、免疫・アレルギー疾患、骨関節疾患における遺伝要因と、体重の個人差に関わる遺伝的因子との間に共通性があることも見いだしたという。
今回の研究成果は、体重の個人差に影響する遺伝要因について、遺伝学的な知見だけでなく、体重と病気との関わりや、生物学的に関連する組織や細胞型など、広範な視点から新しい知見を提供するもの。今後、体重に関わる幅広い科学分野での研究の発展に寄与するものと期待される。
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