機械浴に対する生理学的・心理学的な影響や安全性を科学的検証
京都府立医科大学は9月8日、緩和ケア病棟入院患者の機械浴に対する生理学的・心理学的な影響から、その安全性について科学的検証を行った結果を発表した。この研究は、同大附属病院看護部の藤本早和子総括看護師長、大学院保健看護学研究科の岩脇陽子教授、山中龍也教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Japanese Journal of Clinical Oncology」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
緩和ケア病棟では、清潔ケアとして機械浴が行われている。臥床したまま入浴できる機械浴は、安楽であることから患者からの希望も多いケアのひとつだ。しかし、緩和ケア病棟の入院患者に対する機械浴が、患者の身体面・心理的に及ぼす影響について、これまで科学的に十分に研究されていなかった。
生理学的には大きな変動を及ぼさず
研究グループは、機械浴のケアを生理学的・心理学的な指標を用いて検証。緩和ケア病棟に入院中の患者24名の機械浴前後の生理学的指標として腋下温、脈拍数、血圧、心拍変動のスペクタル解析から副交感神経、交感神経、自律神経機能の基礎活動指標の定量評価を実施した。また、ギャッジアップ40度の反応性自律神経活動も評価。心理学的指標は、状態・特性不安検査を使用した。倫理的配慮を行う上で、京都府立医科大学の医学倫理審査委員会の承認を得た上で実施したという。
検証の結果、生理学的指標については、機械浴後に脈拍数のみ低下傾向を示し、心理学的指標については、状態不安が機械浴後に有意に低下したという。また、実際の患者の言葉を主観的・客観的情報としてまとめたところ、患者へのリラックス効果を示唆する情報が得られたとしている。
緩和ケア病棟の入院患者に対する機械浴は、生理学的には循環動態に大きな変動を及ぼさず、心理学的には不安が低下しリラックスな状態であったことから、安全で安楽な看護ケアであることが示唆された。機械浴が、より生理学的・心理学的な効果があり安全・安楽であることを科学的な実証するため、今後も多角的な研究の継続が必要である、と研究グループは述べている。
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・京都府立医科大学 プレスリリース