ヒト側の遺伝要因の関与が示唆される結核
東京大学は9月7日、CD53というヒトの遺伝子が、非北京型株という系統の結核菌の感染における発症のしやすさと関わることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の徳永勝士教授らの研究チームによるもの。研究成果は「Journal of Human Genetics」オンライン版に掲載されている。
結核は世界三大感染症のひとつであり、世界で約3人に1人が結核菌に感染している。生涯の発症率は10%であり、宿主であるヒト側の遺伝要因の関与が示唆されている。これまで、世界各国の研究チームから発症に関連する遺伝要因の報告が行われてきたが、明確な遺伝要因は見出されていなかった。
研究チームは、結核患者のヒトゲノム試料と感染結核菌ゲノム試料の両方をタイ国内で収集。収集したタイ人結核患者686例ならびに健常者771例において、結核患者に感染している結核菌の遺伝的系統ごとに結核患者群を分類し、ゲノムワイド関連解析というヒトゲノム解析の研究手法を適用した。
個人の発症リスク予測可能に期待
その結果、非北京型株の結核菌の感染における発症のしやすさと関わるヒトゲノム中のSNPを見出したという。他方で北京型株系統の結核菌の感染では、このSNPによる発症リスクの上昇は見られなかった。見出されたSNPは、CD53というヒトの遺伝子の近傍に位置しており、CD53遺伝子の発現量は結核発症患者で上昇していたことから、CD53遺伝子が感染者の病態と関連していることが示唆されたという。CD53遺伝子は白血球の細胞表面抗原タンパク質のひとつをコードしており、今回初めて結核発症との関連が見出された。
また、研究チームはこれまでに、ヒトの免疫に関わるHLAという別の遺伝子も、上記とは異なる系統の結核菌感染時での発症のしやすさと関連することを見出しており、これらの知見をあわせると、ヒトと結核菌の双方のゲノム情報を用いた解析が結核の発症リスクを評価するうえで重要であることがわかってきたとしている。
結核菌の遺伝的系統は世界的には大きく6種類に分類され、世界各地に分布していることが報告されている。今回用いた方法をタイ国内だけでなく、より広く実施することにより、さらに多くの結核発症リスク遺伝子群が同定され、個人の発症リスク予測ができるようになると期待される、と研究チームは述べている。
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・東京大学大学院 医学系研究科・医学部 プレスリリース