食事からのマグネシウム摂取量と虚血性心疾患との関連性
国立がん研究センターは9月8日、多目的コホート研究(JPHC研究)から、男性では、食事からのマグネシウム摂取量が一番少ないグループに比べ、摂取量が一番多いグループの虚血性心疾患の発症リスクが低いという結果が認められたと発表した。
画像はリリースより
カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを多く摂取することは、脳卒中や虚血性心疾患など循環器疾患の予防に有効であることが、主に欧米の研究から報告されているが、アジア人における報告はなかった。
今回発表された「食事からのマグネシウム摂取量と虚血性心疾患発症との関連」研究は、国がんと国立研究開発法人国立循環器病研究センターが共同で行ったもの。1995年と1998年に45~74歳だった約8万5,000人について、食事からのマグネシウム摂取量と虚血性心疾患との関連を調べ、日本人における食事からのマグネシウム摂取量と虚血性心疾患との関連を調べたという。
食事からのマグネシウム摂取量は、追跡開始時のアンケートによる食物摂取頻度調査から推計し、マグネシウム摂取量を、少ない群からQ1~Q5に等分し、摂取量が一番少ない群(Q1)の発症率を基準として、Q2~Q5群における循環器疾患発症率を比較検討した。
他のミネラル摂取量を統計学的に調整した分析結果も発表
約15年の追跡期間中に、4,110人の脳卒中(脳梗塞および出血性脳卒中)と、1,283人の虚血性心疾患の発症を確認。虚血性心疾患の発症リスクは、男女とも、食事からのマグネシウム摂取量が増えるほどリスクが低下する傾向がみられた。男性においては、虚血性心疾患の発症リスクは、食事からのマグネシウム摂取量が一番少ない群(Q1)と比較して、比較的多い群(Q4)からリスクが低くなり、女性では、中間~多い群(Q3~Q5)で、リスクが低くなったという。
さらに、女性では虚血性心疾患と脳卒中を合わせた、全循環器疾患の発症リスクでも、Q3、Q4、Q5群で、それぞれ20%、16%、19%低い結果となった。また、食事からのマグネシウム摂取量と脳卒中との関係は、脳卒中の病型(脳梗塞、出血性脳卒中)別の解析を含め、認められなかったという。
また、マグネシウム摂取量と虚血性心疾患や全循環器疾患発症との関係は、他のミネラルの摂取による好ましい影響を受けている可能性があるため、ナトリウム、カルシウム、カリウムの摂取量を統計学的に調整した分析も実施。その結果、男性では結果は大きく変わらなかったが、女性では摂取量が一番少ない群(Q1)に比べ、摂取量が中間の群(Q3:40~59%)でのみ統計学的有意な差が認められ、虚血性心疾患の発症リスクが39%低いという結果になり、関連が弱まったとしている。
今回の報告は、食事からのマグネシウム摂取と循環器疾患の発症リスクを調べた、アジア人における初めての研究結果。今後について研究グループは、「他のコホート研究や介入研究などで、マグネシウムを摂取することにより、虚血性心疾患のリスクが低くなるかどうか、さらなる検証が期待される」と述べている。
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・国立がん研究センター プレスリリース