呼吸器疾患で不可欠な肺内病変の生体検査
東邦大学は9月7日、1本の極細構造のチューブ内に流体圧を印加することにより、ミミズのような蠕動(ぜんどう)運動を生成する仕組み「Mono-line Drive」を開発したと発表した。この仕組みを用いることによって、将来的には、気管支内を自走して肺内の目標の病変まで自動的にたどりつき、病変の採取や治療が行えるオートガイド・ロボットの開発を目指すとしている。研究は、同大医療センター大森病院呼吸器内科の高井雄二郎准教授と、東京工業大学工学院システム制御系の塚越秀行准教授の研究チームによって行われた。
画像はリリースより
肺がんなど呼吸器疾患において、診断・治療の精度を高めるためには、肺内病変の生体検査が不可欠だ。現在は、気管支鏡検査による用手的生検を行っているが、気管支の分岐が末梢に行くほど多岐かつ細くなるため、それを確実に選択し推進する微細な移動調整は難しい。また、施行医による技術差もあり、確実に病変に生検鉗子を到達させることが難しく、診断精度が十分とは言えなかった。
気管支内視鏡で十分な検査を行うためには、肺内の目標まで確実に到達させることのできる器具と仕組みの開発が必要だ。そのために克服すべき課題とされているのが、極細で分岐が多岐に渡る気管支内でも生検鉗子を確実に目標に進められる仕組みだ。
極細な構造の中を蠕動運動で進むことが可能に
今回、研究チームが開発したMono-line Driveは、1本のチューブ内への加減圧だけで複数のチャンバーに進行波を生成するように設計されており、これにより、気管支のような極細な構造の中を蠕動運動で進むことが可能となった。Mono-line Driveには、推進方向を選択するための湾曲機能や、管路径の変化に適応するための屈曲推進機能も搭載されており、気管支モデルを用いてこれらの有効性を確認したという。
今後は、推進可能な分岐確度の拡大や、カメラ等を搭載し気管支内部の情報収集等を行い、生体検査や治療に活用できる機能の開発を行う予定。
▼関連リンク
・東邦大学 プレスリリース