患者3,713人対象に、黄砂と急性心筋梗塞発症との関連解析
熊本大学は9月4日、アジア大陸の砂漠域に由来する黄砂が心筋梗塞の発症と関連していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大の小島淳特任准教授ら、国立環境研究所の道川武紘主任研究員ら、京都大学、工学院大学、国立循環器病研究センターの研究者らと共同で、熊本大学が熊本県内の医療機関や熊本県との協力の下で実施したもの。研究成果は、ヨーロッパ心臓病学会のHot Lineで口頭発表され、循環器専門誌「European Heart Journal」に掲載された。
画像はリリースより
黄砂は、輸送途中で大気汚染物質や微生物などが付着してくることから、黄砂曝露による健康影響が懸念されており、日本において黄砂飛来後にアレルギー疾患、呼吸器疾患、循環器疾患が増加したと報告されている。
研究グループは、黄砂が比較的多く観測される九州地方の中でも、熊本県内で発症した急性心筋梗塞を網羅的に登録している「熊本急性冠症候群研究会」のデータベースを用いた。発症日時が明らかな急性心筋梗塞患者のうち、熊本県外に在住だった人や入院中に急性心筋梗塞を発症した人、祝日や休日に発症した人、患者背景の情報が不足している人を除外した3,713人を対象として、黄砂への曝露と急性心筋梗塞発症との関連解析を行ったという。
慢性腎臓病患者は黄砂の影響を受けやすく
黄砂が観測された翌日に急性心筋梗塞を発症するオッズ比は、1.46(95%信頼区間:1.09-1.95)であり、黄砂が観測された後に急性心筋梗塞患者が増えるという関連性が判明。この関連性は、PM2.5、光化学オキシダント、二酸化窒素や二酸化硫黄といった大気汚染物質の影響を考慮しても変化はなかった。
患者の背景要因で群分けを行った上で黄砂と心筋梗塞との関連性を検討したところ、75歳以上の高齢者、男性、高血圧、糖尿病、非喫煙者、慢性腎臓病で、黄砂と急性心筋梗塞発症に関連性があることが明らかになった。中でも、慢性腎臓病のある人は、ない人と比べて有意に黄砂の影響を受けて急性心筋梗塞を起こしやすいという結果だったという。
また、背景要因が複数ある場合、さらに黄砂の影響を受けやすくなるかを検討するため、対象者に、75歳以上なら1点、男性なら1点、高血圧なら1点、糖尿病なら1点、非喫煙者なら1点、慢性腎臓病なら1点を割り振った上でそれらを合計し、0~6点までのスコアにした。その結果、スコアが高い(5~6点)群で、より黄砂の影響を受けやすいことが明らかになったという(オッズ比2.45、95%信頼区間1.14-5.27)。
今後は、黄砂の影響を受けやすい背景要因に関する知見を蓄積し、黄砂による健康影響の予防につなげていきたい、と研究グループは述べている。
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・熊本大学 プレスリリース