幅広い適応症を持つ非ビタミンK拮抗経口抗凝固剤
ドイツのバイエル社は8月27日、慢性冠動脈疾患(CAD)・末梢動脈疾患(PAD)を対象とした第3相臨床試験「COMPASS」において、同社の第Ⅹa因子阻害剤リバーロキサバン2.5mg 1日2回とアスピリン100mg 1日1回の併用投与は、脳卒中、心血管死、心筋梗塞の複合評価項目のリスクを24%低減(相対リスク減少)したと発表した。この試験データは、8月26~30日にスペイン・バルセロナで開催中の2017年欧州心臓病学会学術集会において発表。また、COMPASS試験で得られた知見は、米医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に同時掲載されている。
リバーロキサバンは、最も幅広い適応症を持つ非ビタミンK拮抗経口抗凝固剤(NOAC)で、海外では製品名「Xarelto(R)」として販売されている(日本販売名「イグザレルト(R)」)。同剤は、「成人における肺血栓塞栓症(PE)の治療」「成人における深部静脈血栓症(DVT)の治療」など、海外で7つの適応症が承認されており、他のNOACより多くの静脈と動脈の血栓塞栓症に対し、発症抑制をもたらしている(日本未承認)。
COMPASS試験では、リバーロキサバン2.5mg 1日2回とアスピリン100mg 1日1回併用投与について、アスピリン100mg 1日1回単独投与と比較検討した。なお、同試験に参加した被験者は、高血圧、高コレステロール血症や糖尿病に対するガイドラインで推奨された治療法をすでに受けていたという。
脳卒中の相対リスク減少は42%、心血管死のリスクも22%低減
比較検討の結果、有効性の複合評価項目である主要心血管イベント(MACE)におけるベネフィットは、脳卒中および心血管死のリスクの有意な低減が主に寄与していた(相対リスク減少;脳卒中42%、心血管死22%)。また、心筋梗塞のリスクも14%低減したが、統計学的有意差は認められなかった。さらに、ベネフィットとリスクを総合的に評価した臨床的有用性(ネット・クリニカル・ベネフィット;最も重篤な出血事象のリスクに見合う脳卒中、心血管死、心筋梗塞の低減によるベネフィットに対する総合的評価と定義)を20%大きく改善することを示したという。
全死亡のリスク低減に関するハザード比(HR)は0.82だった(95%信頼区間[CI]0.71~0.96;P=0.01)。出血事象の発現率は低く、重大な出血事象は増加したが、致死的出血や頭蓋内出血の有意な増加は見られなかった。また、PADの患者集団では、四肢の主要有害事象と血管系の病因によるすべての大切断が有意に低減したという。
なお、同試験は優れた有効性により予定されたリバーロキサバンの治療期間を約1年前倒しして中止され、バイエル社、ヤンセン社とポピュレーション・ヘルス・リサーチ・インスティチュート(PHRI)は、非盲検継続投与試験におけるリバーロキサバンの被験者への提供に向けて取り組んでいる。
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・バイエル薬品株式会社 ニュースリリース