全世界で人口の約2%にみられる頻度の高い疾患
理化学研究所は8月24日、思春期特発性側彎症(AIS:Adolescent Idiopathic Scoliosis)の進行、重症化に関連する新たな遺伝子「MIR4300HG」を発見したと発表した。この研究は、理研統合生命医科学研究センター骨関節疾患研究チームの池川志郎チームリーダー、小倉洋二客員研究員と、側彎症臨床学術研究グループによる共同研究グループによるもの。研究成果は、「Human Molecular Genetics」掲載に先立ち、オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
側彎症は、神経や筋肉の病気、脊椎の奇形などが原因で起きるものもあるが、その多くは原因が特定できない特発性側彎症だ。特発性側彎症の中で最も発症頻度の高いものが、思春期に起きるAIS。全世界で人口の約2%にみられる非常に頻度の高い疾患だ。
AISの発症・進行には遺伝的要因が関与すると考えられ、世界中でその原因遺伝子の探索が行われてきた。池川チームリーダーらは、先行研究により、AISの疾患感受性を決定する遺伝子「LBX1」「GPR126」「BNC2」を発見。しかし、AISの進行に関連する遺伝子は発見されていなかった。
MIR4300量の低下が、側彎の進行に関連する可能性
研究グループは、日本人のAIS患者2,142人について、側彎の進行の有無を決定し、ヒトのゲノム全体を網羅する約750万個の一塩基多型(SNP)を調べ、側彎の進行の有無と強い相関を示すSNPを発見。さらに、この結果を別の日本人のAIS患者606人を用いた相関解析により確認し、AISの進行と非常に強い相関を示す一群のSNPを見つけたという。
これらのSNPは遺伝子MIR4300HG内に存在。MIR4300HGは、マイクロRNA「MIR4300」をコードしている。高い相関を示すSNPのひとつrs35333564を含むゲノムの領域は、遺伝子の発現に関わるエンハンサー活性を持ち、進行に関連するSNPの対立遺伝子座位(アレル)を持つゲノムの領域では、エンハンサー活性が低下していることから、MIR4300量の低下が、側彎の進行に関連する可能性が考えられるという。
AISの治療において、進行、重症化の予防は最重要課題だが、これまであまり有効な方法がなかった。今後、MIR4300の機能をさらに詳しく調べることで、側彎進行の予測法の開発、分子レベルでのAISの病態の解明、側彎進行の予防法や治療薬の開発が期待できる、と研究グループは述べている。
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