1型糖尿病のなかでも、とくに急激に発症
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は8月22日、患者由来のiPS細胞を用いて劇症1型糖尿病の病態メカニズムの一端を解明したと発表した。この研究は、大阪大学大学院内分泌・代謝内科、京都大学CiRA増殖分化機構研究部門の細川吉弥研究員らの研究グループによるもの。研究成果はアジア糖尿病学会誌「Journal of Diabetes Investigation」に掲載されている。
画像はリリースより
劇症1型糖尿病は、1型糖尿病のなかでも、とくに急激に発症するもののひとつ。特定の遺伝的素因をもつ人において、ウイルス感染をきっかけに起こる免疫反応により急激に膵β細胞が傷害され、ほとんどすべてのβ細胞が破壊されることで、インスリンが不足した状態になるとされている。しかし、膵β細胞が傷害される詳細なメカニズムはよくわかっていない。
劇症1型糖尿病患者の膵β細胞様細胞、細胞死を起こす割合が高く
研究グループは、まず、劇症1型糖尿病患者3人の皮膚細胞に6つの初期化因子を導入することで、iPS細胞を作製。それらのiPS細胞は、化合物および成長因子の組み合わせ処理を行うことで、インスリンを分泌する膵β細胞様の細胞に分化可能なことを示した。
次に、劇症1型糖尿病患者および健常者のiPS細胞から分化誘導させて得られた膵β細胞様細胞に、細胞傷害刺激としてサイトカインを投与した。その結果、劇症1型糖尿病患者の膵β細胞様細胞では、細胞死(アポトーシス)を起こしている細胞の割合が高いことが明らかになったという。
さらに、この病態モデルを用いてRNAシークエンスによる網羅的遺伝子発現解析を行った結果、いくつかのアポトーシス関連遺伝子や抗ウイルス関連遺伝子の発現に違いがあることが判明したという。
今回明らかになった病態モデルは、劇症1型糖尿病のさらなる病態解析への応用が期待される、と研究グループは述べている。
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