悪性リンパ腫の約5%に相当する濾胞性ヘルパーT細胞の性質をもつリンパ腫
筑波大学は8月24日、特定の悪性リンパ腫でみられるRHOA遺伝子変異による異常なタンパク質がVAV1タンパク質と結合し、T細胞受容体シグナルを異常に活性化することを発見したと発表した。この研究は、同大医学医療系の千葉滋教授、坂田麻実子准教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は「Leukemia」に掲載されている。
画像はリリースより
血液のがんである悪性リンパ腫は多数の亜型に分類され、予後や治療法も異なるため、どの亜型かを早期に診断することが、効果的な治療を施す上で重要となる。病因の解明と関連して、一部の亜型では遺伝子変異の解明が進みつつある。研究グループは、2014年に、高齢者で発症頻度が高く、悪性リンパ腫の約5%に相当する「濾胞性ヘルパーT細胞の性質をもつリンパ腫」では、極めて高頻度に、RHOA遺伝子が合成を指定しているタンパク質の1か所(17番目のアミノ酸)がグリシンからヴァリンに変異していること(G17V RHOA変異)を明らかにしている。
RHOA遺伝子やVAV1遺伝子の変異にもとづく治療開発に期待
今回の研究では、G17V RHOA変異によって生じた異常なRHOAタンパク質が、T細胞受容体シグナルを伝達する分子であるVAV1タンパク質と結合し、VAV1タンパク質の異常な活性化(リン酸化)を起こすことを解明。また、G17V RHOA変異がない場合の一部の場合では、VAV1遺伝子に異常があり、VAV1タンパク質の活性化を自己抑制する仕組みが壊れ、異常な活性化がおきていることがわかったという。このVAV1タンパク質の活性化は、T細胞受容体シグナルの活性化を起こし、これは他の血液がんで使用されているチロシンキナーゼ阻害剤「ダサチニブ」によって阻害されたとしている。
今回の研究成果によって、これまで治療が困難だった悪性リンパ腫の一部について、特異的なゲノム異常に基づく新規治療方法の創出が期待される。今後について、研究グループは「RHOA遺伝子やVAV1遺伝子変異の診断にもとづく治療の臨床開発を目指す」としている。
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・筑波大学 プレスリリース