■中央IRBなど役割明記
日本医療研究開発機構(AMED)は、多施設共同臨床研究における審査の集約化に向け、一括した倫理審査を行うためのガイドラインをまとめた。複数の施設で共同臨床研究を行うためには、施設ごとに倫理審査委員会(IRB)に申請する必要があったが、これを1カ所で行えるように促す。人を対象とした医学系指針では一括した倫理審査が定められているものの、これまで施設の事情や審査の質確保の観点から、倫理審査の集約化は進んでいなかった。今回、ガイドラインで一定の手続きを定めることにより倫理審査を均質化、効率化し、臨床研究のスピードアップを目指す。
ガイドラインは、2016年度の中央治験審査委員会・中央倫理審査委員会基盤整備モデル事業の成果としてまとめられたもの。中央倫理審査を活性化させるため、他の施設に倫理審査を委託できるよう委受託の仕組みを整備し、ガイドラインと共に、2施設間で交わす「倫理審査委受託契約書」、個々の研究について受託するかどうか判断する「倫理審査委託に関する研究機関要件確認書」も作成した。
対象は、人を対象とする医学系指針とゲノム指針に基づいて実施される臨床研究。ガイドラインでは、一括した中央IRBの役割について、審査を委託された医療機関の長の依頼に基づき、多施設共同研究の研究計画に対して倫理的・科学的観点から中立、公正に審査し、文書で意見を述べることとし、審査を受託した医療機関と委託した医療機関の情報共有を速やかに行い、円滑に審査を進めなければならないとした。
中央IRBは、倫理審査の委託に関する要件確認書などを参考に、委託した医療機関の実施体制を十分に把握した上で審査を行って意見を述べなければならないとした。多施設共同研究について審査後、継続してその研究に関する審査を行って意見を述べると共に、自ら審査した多施設共同研究について、その内容が医学系指針、ゲノム指針に適合していないことを知った場合は施設訪問監査など必要な調査を実施できるとしている。
また、倫理審査を受託する施設については、他の施設から審査依頼を受けることができ、その研究の倫理性と科学的妥当性を適切に判断できる能力がなければならないとし、委受託契約書の内容に基づいて審査に関する事務局や委員会運営を行うほか、多施設共同研究の審査に必要な標準業務手順書を作り、審査を行うことなどを定めた。
一方、倫理審査を委託する施設についても、同様に受託施設と契約書を参考に契約を結ぶことを明記。委託施設の長は、指針に適合しているか自ら点検、評価を行うことや多施設共同研究について中央IRBに意見を求め、それを尊重して研究の許可、不許可など必要な措置を決定しなければならないなどとした。
多施設共同研究を統括する研究代表者については、研究全体の実施状況を中央IRBに報告しなければならないとし、共同研究の各参加施設の実施状況とモニタリングの報告をまとめ、中央IRBに一括して報告しなければならないとしている。
さらに、研究代表者が所属する医療機関の長は、重篤な有害事象が報告された場合、手順書に従って速やかに対応すると共に、中央IRBの意見を聴いて必要な措置を講じなければならないとした。中央IRBは研究代表者に審査結果を報告するとしている。