リザーバー内のウイルスをいかにして除去するかが課題
熊本大学は8月22日、新規のエイズウイルス感染細胞除去法として「Lock-in and apoptosis法」を開発したと発表した。この研究は、同大大学院生命科学研究部生体機能分子合成学分野の立石大大学院生、大塚雅巳教授らの研究グループによるもの。研究成果は、学術雑誌「Scientific Reports」に掲載された。
画像はリリースより
近年、複数の抗エイズ薬を用いる多剤併用療法の進展により、エイズウイルス感染者体内でのウイルス増殖抑制ができるようになった。しかし、ウイルスは、リザーバーという特別な細胞内に潜伏して生き残ってしまうため、感染者体内からウイルスを完全に駆逐することはできない。いかにしてリザーバー内のウイルスを除去するかが、現在のエイズ研究の課題となっている。
数年前に開発された「kick and kill法」は、リザーバー細胞にある種の薬剤を作用させ、中で潜伏しているウイルスを活性化(kick)させたところで、リザーバー細胞を殺す(kill)というウイルス駆除法。しかし、薬剤でウイルスを活性化することはできても効率良く細胞を殺せない、という問題があった。
ウイルスを細胞内に閉じ込めて細胞死させる新手法
今回、研究グループは、新たに「Lock-in and apoptosis法」という方法を開発した。まず、新規化合物「L-HIPPO(Hippo=Hippopotamus=カバ)」を合成。L-HIPPOをウイルス感染細胞に導入すると、ウイルスの出芽が抑えられ、ウイルスが細胞内に閉じ込められて出てこられなくなるという。
次に、L-HIPPOを細胞内に運ぶα-CDEというキャリアとともにウイルス感染細胞に加えたところ、ウイルスが細胞内に閉じ込められ、その細胞は細胞死(アポトーシス)した。リザーバー内のウイルスを活性化させる薬剤はすでにあるため、エイズウイルスを感染細胞内に閉じ込めて細胞死させる今回開発された方法を組み合わせることで、リザーバー内に潜伏しているウイルス駆除が可能になるという。
今後について研究グループは、リザーバー内のウイルスを活性化させる薬剤と組み合わせて、標的となるリザーバーに効率よくL-HIPPOを導入させることができるように改良したい、と述べている。
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