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脳や脊髄の傷ついた神経回路を修復させる仕組みを解明-阪大

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2017年08月24日 PM12:30

ホルモン様物質「」が神経回路を修復

大阪大学は8月21日、膵臓から産生されるホルモン様物質「FGF21」が脳や脊髄の神経回路を修復することを明らかにした。この研究は、同大大学院医学系研究科の村松里衣子准教授(分子神経科学、免疫学フロンティア研究センター兼任)、山下俊英教授(分子神経科学、免疫学フロンティア研究センターおよび生命機能研究科兼任)らの研究グループによるもの。研究成果は、米医学誌「The Journal of Clinical Investigation」に公開されている。


画像はリリースより

脳脊髄の血管の構造は特殊で、血管の中の物質が脳脊髄の細胞に届きにくくできている。そのため、脳脊髄の神経回路の修復研究では、脳脊髄の内部に存在する物質に注目が集まっていた。

一方、さまざまな脳脊髄疾患において脳脊髄の血管の構造に異常が生じた結果、血液が脳脊髄の中へ漏れ込むことが知られていた。しかし、漏れ込んだ血液やその中に含まれている物質が脳脊髄の神経回路に与える作用は、明らかになっていなかった。

多発性硬化症の治療につながる可能性

研究グループは、マウスを用いた実験から、髄鞘の修復を促す物質が血液の中に含まれていること、またその修復する働きを持つ物質はFGF21と呼ばれるホルモン様物質であり、特に膵臓から分泌されるものであることを突き止めた。FGF21欠損マウスと正常マウスを比較すると、術後14日で足を踏み外す割合が12%違うなど、症状の改善が抑制されていた。また、髄鞘が傷ついたマウスにFGF21を投与すると、髄鞘がよく修復するようになったという。

髄鞘が修復するためには、オリゴデンドロサイト前駆細胞が増殖する必要がある。そこで研究グループは、多発性硬化症患者の脳のオリゴデンドロサイト前駆細胞を調べたところ、それらの細胞にはFGF21受容体が発現していることを見出した。さらに培養細胞を用いた実験から、FGF21がヒトのオリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖を促すことを明らかにしたという。

髄鞘の傷害は、指定難病の多発性硬化症などで認められる特徴的な病変であり、症状の発症や悪化との関連が指摘されている。今回の研究成果から、FGF21による神経回路の修復促進が、多発性硬化症の治療につながる可能性が考えられる、と研究グループは述べている。

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