■学校環境衛生基準に反映へ
厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課化学物質安全対策室は、室内空気中化学物質の指針値案をまとめた。指針値の設定は、住宅の高気密化などに伴い、建材などから発生する化学物質などが原因で、目や気道に刺激を感じるといった健康影響が指摘される「シックハウス症候群」に対応するためのもの。今回は、テキサノールなど3物質について、新たに指針値を設定したほか、既に指針値が設定されているエチルベンゼンやキシレンなど4物質について、現行の数値から引き下げる。既に意見募集を終えており、寄せられた意見を踏まえ指針値の策定を進める。学生が1日の大半を過ごす教室においてもシックハウス対策は重視されており、文部科学省が策定作業を進めている「学校環境衛生基準」の改訂版に反映される予定だ。
目やのどの痛み、全身の倦怠感、めまい、頭痛など、様々な症状を引き起こすシックハウス症候群。厚労省では、こうした「シックハウス問題」に対応するため、2002年までに、鼻咽頭粘膜への刺激が指摘される「ホルムアルデヒド」や神経行動機能・生殖発生への影響が指摘される「トルエン」など13種類の化学物質について「室内濃度指針値」の設定を行っている。
ただ、指針値を設定してから約10年が経過しており、新たな化学物質が使用されているとの指摘があることや、WHO空気質ガイドライン等の動向と整合を検討する必要があることなどから、改めて、指針値の設定のあり方を検討し、一定の結論を得た。
「2-エチル-1-ヘキサノール」については、ヒトの眼刺激や感覚器などへの影響に関する知見から、室内濃度指針値を130μg/m3(0.02ppm)と設定。
「テキサノール」については、ラットに対する反復経口投与毒性試験における一般毒性に関する知見から、室内濃度指針値を240μg/m3(0.03ppm)と設定した。
「2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート(TXIB)」については、反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験における親動物の一般毒性に関する知見から、室内濃度指針値を100μg/m3(8.5ppb)と設定した。
眼や咽喉への刺激が指摘され、指針値が設定されている「キシレン」については、室内濃度指針値を現行の870μg/m3(0.20ppm)から200μg/m3(0.05ppm)に緩和。
発癌性が指摘される「エチルベンゼン」についても、最新の国内外の評価機関における評価結果を考慮し、現行の3800μg/m3(0.88ppm)から58μg/m3(0.01ppm)に引き下げた。
新生児ラットにおける生殖器の構造異常などの影響が指摘される「フタル酸ジ-n-ブチル」は、室内濃度指針値を現行の220μg/m3(0.02ppm)から17μg/m3(1.5ppb)、ラットにおける精巣への病理組織学的影響が指摘される「フタル酸ジ-2-エチルヘキシル」についても、現行の120μg/m3(7.6ppb)から100μg/m3(6.3ppb)へとそれぞれ引き下げた。