抗癌剤「オプジーボ」による重篤な副作用として知られる重症筋無力症の発生頻度は低いものの、発症した場合は重篤になる確率が高いことが、慶應義塾大学内科学教室の鈴木重明専任講師らの共同研究で明らかになった。研究成果は、米国神経学会誌「ニューロロジー」に掲載された。
「オプジーボ」は悪性黒色腫や肺癌など広く有効性を発揮する一方、これまでの抗癌剤に見られない副作用が報告されている。その中で、重症筋無力症は免疫異常により、体全体の筋肉、部分的な筋肉が動かなくなる病気で、薬の服用と関係なく発症する。
今回、研究グループは、2014年9月から昨年8月までのオプジーボ販売後の副作用報告を独自に解析したところ、オプジーボを投与された9869人中12人(0.12%)が重症筋無力症を発症したことが分かった。そのうち9人は1回目か2回目の点滴投与をした後に発症し、薬と関係なく発症した重症筋無力症に比べて、最も重篤な呼吸ができなくなる症状が6人に見られるなど症状が重い場合が多かった。
これらのことから、オプジーボ投与による副作用の重症筋無力症は、発症頻度は低いものの、手足や心臓の筋肉に激しい炎症を起こす筋炎や心筋炎を合併し、薬と関係なく発症した重症筋無力症に比べて重篤になるケースが多いことが明らかになった。
研究グループは、重篤化を防ぐために、ステロイドや免疫グロブリンによる治療は有効としつつ、長期間の入院が必要となり、死亡例も見られると指摘。特に重篤な症状の場合は、より早期の診断と共に、あらゆる診療科の医師、看護師、薬剤師などチーム医療による迅速な処置が必要としている。