リンの摂取量の増大が老化につながるかを解析
慶應義塾大学は8月17日、リンに対して寿命を制御する分子Enpp1がKlothoの発現に大きな影響を与える分子として、老化を制御していることを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部先進運動器疾患治療学寄附講座の宮本健史特任准教授らの研究グループが行ったもの。研究成果は、学際的総合ジャーナル「Scientific Reports」に掲載されている。
リンが体内で正常に代謝されることは、寿命を制御するために必須だが、その体内メカニズムはよくわかっていなかった。そこで、研究グループは、リンの摂取量の増大が老化につながることを明らかにするため、リンを代謝する体内の機能に注目。通常のマウスと、骨形成や糖尿病発症に関わるタンパク質Enpp1を欠損したマウスに、通常食の1.5~2倍程度(通常のマウスには老化の特徴が発現しない程度)のリンを摂取させ、解析を実施した。
Enpp1欠損マウス、リン投与量が増えると骨粗鬆症などの症状
研究の結果、Enpp1欠損マウスではリンの投与量が増えると、通常の野生型マウスでは見られないような骨粗鬆症や動脈硬化、皮膚の萎縮などの老化状態が現れ、数週間程度で死に至るなど短命になることが判明したという。このことは、Enpp1が食事の際に摂取されたリンを制御することが、体の老化や寿命の短縮を防止するのに必須の役割を担っていることを示している。
また、Klothoは腎臓において老化を制御することが知られているが、Enpp1を欠損したマウスでは、とくにリンの摂取量が増えた場合に、Klothoが有意に低下することもわかったという。
今回の研究は、健康寿命延伸に向けて、重要な老化制御機構の一端の解明であり、加齢に伴う身体機能の低下を防ぐ研究につながる成果と考えられる、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・慶應義塾大学 プレスリリース