慢性的なストレスが病気を悪化させる「病は気から」のメカニズム
北海道大学は8月16日、ストレスがどのようにして消化管疾患や突然死をもたらすのか、その分子メカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大遺伝子病制御研究所の村上正晃教授らの研究グループによるもの。研究成果は、生命科学の専門オンライン誌「eLIFE」に公開されている。
画像はリリースより
慢性的なストレスは、胃腸疾患、心疾患などのさまざまな病気を悪化させることが経験的に知られているが、その分子メカニズムはほとんど明らかになっていない。村上教授らの研究グループはこれまでに、自己免疫疾患のマウスを用いて、地球の重力がふくらはぎの筋肉を刺激することで神経が活性化し、第5腰髄(L5)の血管から血液脳関門を超えて免疫細胞が集まり、病気が発症する現象「ゲートウェイ反射」を報告していた。
脳の血管に微小な炎症が誘導され、消化器や心臓の機能障害を惹起
今回の研究では、ストレスで神経が活性化されることで、脳内の特定の血管に免疫細胞が侵入し微小炎症が引き起こされる、新たなゲートウェイ反射を発見。この血管部の微小炎症は、通常は存在しない神経回路を形成して活性化し、消化管、心臓の機能不全を引き起こして突然死を誘導したという。これは、ストレスが臓器の機能不全を引き起こす理由を示す世界で初めての発見であり、同じ程度のストレスでも病気になる人、ならない人の違いが脳内微小炎症の有無によって決まる可能性を示唆しており、脳内の微小炎症を引き起こす病原性CD4+T細胞の数を調べることで、ストレス性疾患へのかかりやすさを予測できる可能性があるという。
また、多発性硬化症では病気が悪化すると、治療法がまだない進行型になるが、今回の結果は、その発症原因、今後の治療法の解明に大きな示唆を与える可能性がある。さらに、認知症患者など他疾患で認められる脳内微小炎症の働きが、新規の神経回路の活性化を介して脳を含む臓器機能の不調を誘導する可能性も示された、と研究グループは述べている。
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