精神疾患や加齢による認知機能の低下は、脳の配線の繋がり方の偏りが原因
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)は8月7日、脳の配線を望ましい方向に変更し、認知機能を変化させるニューロフィードバック学習法の開発に成功したと発表した。この研究は、ATR脳情報通信総合研究所などの研究グループが、京都大学、東京大学と共同で行ったもの。研究成果は、「Cerebral Cortex」に掲載されている。
画像はリリースより
近年、加齢や精神疾患などで生じる脳の障害は、脳のネットワークの障害として理解されるようになった。加齢や精神疾患による認知機能の低下の一部は、比較的少数の特定の配線の繋がりが正に偏りすぎたり負に偏りすぎたりし、情報の流れの異常によって生じると考えられている。しかし、精神疾患の治療法として用いられてきた薬物や認知行動療法、加齢に対する脳トレーニングなどは、脳全体の配線に広く影響を与え、特定の領域やネットワークの繋がり方を狙い通り増減させることはできないという。
研究グループは、2015年に配線をピンポイントで変えることができる訓練法を開発。しかし、配線の繋がりを変えることができるとわかったのみで、特定の配線における繋がりを増加させたり減少させたりできるか、繋がりを増減させることで日常生活に重要な認知機能にまで変化をおよぼすことができるか、という治療や認知機能の回復に応用する上で重要なことが明らかになっていなかった。
脳内の特定の配線の繋がり方を変化させることに成功
今回の研究では、脳活動をミリメートル単位で計測できるfMRI装置を利用。脳の特定の領域同士の繋がり方を実験参加者に即座に知らせること(実時間フィードバック)を繰り返し、ネットワーク内での特定の領域同士の繋がり方を増加または減少の両方向に変化させることが可能で、変化の方向に応じて認知機能の変化が異なることが判明したという。
同研究では健常者を対象としたが、今後は、今回開発した機能的結合ニューロフィードバック学習法を精神疾患の治療や加齢による認知機能の低下回復に役立てるための検討を行う予定だという。また、このような学習方法を、脳波や光トポグラフィーなどの軽量装置に実装することで、より多くの人々に利用してもらうことも検討中だとしている。
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・株式会社国際電気通信基礎技術研究所 プレスリリース