うつ病発症に関わると考えられる生活環境のストレス
国立遺伝学研究所(NIG)は8月4日、社会的順位がうつ様行動や脳内の遺伝子発現に影響することを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所の堀井康行氏、小出剛准教授らと、静岡県立大学の長澤達弘大学院生、下位香代子教授らが共同で行ったもの。研究成果は、英オンライン・ジャーナル「Scientific Reports」に掲載された。
画像はリリースより
うつ病の発症には、生活環境によるストレスが深く関わっていると考えられている。そのなかでも社会的ストレスが脳に与える影響を明らかにすることは、うつ病を軽減するための治療法の確立に役立つと期待されている。
社会的順位の低い個体、不安様行動とうつ様行動を顕著に示す
研究グループは、社会的ストレスがあると報告されていた実験動物のマウスを用いて、うつ様行動を誘発する社会的ストレスの詳細を調査。その結果、社会的順位の高い個体に比べて社会的順位の低い個体は、顕著に高い不安様行動とうつ様行動を示すことがわかったという。
さらに、順位に応じて脳内のセロトニン受容体等の遺伝子発現が影響を受けていることが判明した。セロトニンとうつ病の関連性が示されていることから、抗うつ薬の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)「フルオキセチン」をこれらのマウスに投与。その結果、社会的順位による行動と遺伝子発現への影響が大きく緩和されたという。
今回の研究成果により、社会的順位がマウスの行動や脳内の遺伝子発現にどのような影響を与えているのかが明らかになった。今後、うつ病の改善に向けた方法論の確立につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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・国立遺伝学研究所 プレスリリース