■「観察研究」は指針対象
厚生労働省は2日、厚生科学審議会臨床研究部会の初会合を開き、臨床研究法に規定する実施基準の概要案を示した。法の網にかかる臨床研究の範囲を、人に医薬品などを投与する行為のうち「医行為に該当するもの」と規定。観察研究は法に基づく臨床研究に当たらないと明確にした。省令に規定する実施基準の概要案についても議論を開始。委員からは「製薬企業から財団経由で資金提供を受けた研究は、特定臨床研究になるのか」など、資金の流れを法規制の範囲をめぐり意見が相次いだ。
4月に臨床研究法が成立し、実際の運用に当たって省令に規定する実施基準などについては、同部会で検討することとされていた。初会合では、省令に規定する臨床研究、特定臨床研究の定義、実施体制や実施状況の確認などに関する実施基準の概要案が示され、具体的な議論が始まった。
二重規制となることを避けるため、法規制の対象となる臨床研究の範囲を、医薬品などを人に投与する行為のうち「医行為に該当するものを行うこと」と規定。観察研究は、法に基づく臨床研究には当たらないと明確化した。さらに、薬機法によるGCP遵守が義務づけられている治験や製造販売後臨床試験などは、法の対象外とすることを省令で規定する。
省令に規定する臨床研究実施基準で、実施体制に関しては、法律上の臨床研究を実施する者を原則として「研究責任者」とする案を提示。研究責任者は、研究対象者の生命、健康、人権を尊重して研究を実施しなければならないとした上で、実施医療機関で研究業務を統括する医師と位置づけ、適正に研究を実施できる教育・訓練を受けていなければならないとした。多施設共同研究を行う場合には、その中から統括責任者を選ばなければならないとしている。
委員からは、法規制の対象となる特定臨床研究の範囲について意見が相次いだ。花井十伍委員(全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人)は、「企業“等”から資金提供を受けた研究に、財団からの資金提供は含まれるのか」と質問。藤原康弘委員(国立がん研究センター中央病院副院長)も、製薬企業から直接ではなく、研究を支援する財団やNPO経由で研究者に資金提供されているケースが特定臨床研究になるのかを質した。
厚労省医政局研究開発振興課の森光敬子課長は、「財団を通して資金提供された臨床研究を野放しにはしない」とした上で、「様々なケースを整理して、資金の流れをどう把握するかは今後の議論」との考えを示した。製薬企業が財団やNPOを通して資金提供する研究は、以前から隠れ蓑になっていることが問題視されていたが、今後の議論で法規制される可能性も出てきた。
国忠聡委員(日本製薬工業協会医薬品評価委員会委員長)は、「最終的なガバナンスは認定臨床研究審査委員会が負うのか、研究責任者なのかもう少し整理してほしい」と要望した。そのほか、多施設共同研究をまとめる統括責任者の位置づけが誤解を与えるなどと議論になった。