熱を用いる高周波アブレーション法にはさまざまな課題が
東北大学は8月3日、頻拍性不整脈に対するアブレーション治療の分野において、衝撃波を用いた治療法を開発し、動物実験でその有効性・安全性を報告したと発表した。この研究は、同大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明教授の研究グループによるもの。研究成果は、ヨーロッパ心臓学会(European Society of Cardiology, ESC)の学会誌「EP Europace 誌」(電子版)に掲載されている。
画像はリリースより
現在、頻脈性不整脈に対しては、高周波カテーテルを用いて心筋の不整脈の発生源となる部分を焼き切る「高周波アブレーション法」が主流。しかし、熱を発生する高周波通電を用いるため、深達度の限界、心内膜損傷に伴う血栓塞栓症、炎症治癒反応の遷延化による再発という問題があった。
血栓塞栓症の原因となりうる心臓の内側部分の損傷が軽いなどの効果
以前より、下川教授の研究グループは、熱を用いないより安全な方法として、高周波の代替に衝撃波を用いたアブレーション治療の研究開発に取り組んできた。そして今回、改良を重ねた、「改良版衝撃波アブレーション法」において、動物実験による安全性を実証したという。
改良版衝撃波アブレーション法は、従来の高周波アブレーション法よりも深い場所まで効果が到達し、さらに深さの調節も可能。さらに、血栓塞栓症の原因となりうる心臓の内側部分の損傷が極めて軽く、その損傷部位では炎症が早く治まり、不整脈が再発する危険性が大幅に低下するという。改良版衝撃波アブレーション法は、今後の不整脈治療でより有効で安全な選択肢となることが期待される、と研究グループは述べている。
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