次世代シーケンサーを用いた免疫ゲノム解析で解明
東京医科歯科大学は7月31日、胃がん組織におけるリンパ球の抗原受容体の全体像を、次世代シーケンサーを用いた免疫ゲノム解析で解明し、硫酸化グリコサミノグリカンががん組織における主要ながん免疫抗原であることを突き止めたと発表した。この研究は、同大難治疾患研究所ゲノム病理学分野の石川俊平教授と加藤洋人助教、河村大輔助教らと、東京大学先端科学技術研究センターゲノムサイエンス部門の油谷浩幸教授、大学院医学系研究科人体病理学・病理診断学分野の深山正久教授との共同研究によるもの。研究成果は「Cell Reports」に掲載されている。
画像はリリースより
胃がんは日本におけるもっとも高頻度な悪性腫瘍のひとつで、多くの人が罹患し、年間約5万人が死亡している。近年、がん免疫療法への注目が高まっているが、効果が得られるのは一部の症例のみであり、特に現行のがん免疫療法に抵抗性であると予想されるびまん型胃がん(スキルス胃がん)については、がん免疫システムの全体像の解明が求められている。
がん免疫療法の最適化、がんワクチンの開発につながると期待
今回の研究では、びまん型胃がんの組織に浸潤するリンパ球について、次世代シーケンサーを用いて「免疫レパトア解析」と呼ばれる詳細な免疫ゲノム解析を行い、がん組織におけるリンパ球の組成の全体像を明らかにした。そのなかで、多くの症例のがん組織中では、特定のBリンパ球が増えていることを見いだし、それらのBリンパ球が作り出す抗体が糖鎖のひとつである硫酸化グリコサミノグリカンを認識していることをつきとめたという。
これにより硫酸化グリコサミノグリカンが胃がん組織における主要ながん免疫抗原であることが初めて示された。また、免疫ゲノム解析によって得られたがん特異的に反応するBリンパ球のDNAシーケンス情報をもとにヒト抗体を作成したところ、さまざまながん細胞に結合し、抗腫瘍活性を持つことを見いだしたとしている。
今回の研究により、酸化グリコサミノグリカンががん免疫の主要な抗原であることが見いだされた。今後、がん免疫療法の最適化やがんワクチンの開発につながる重要な成果と考えられる、と研究グループは述べている。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース