眼圧下降以外の治療法開発が求められる緑内障
東北大学は8月1日、ポリフェノールの1種「ヘスペリジン」が、マウスの網膜神経節細胞を保護する効果を示すことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科眼科学分野の中澤徹教授らのグループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
画像はリリースより
緑内障は、日本人の中途失明原因第1位の疾患。網膜神経節細胞と視神経が障害されることで発症する。現在、唯一科学的根拠のある治療法は、薬物、レーザーまたは手術による眼圧下降療法だが、日本の緑内障患者の多くは眼圧が正常範囲である正常眼圧緑内障であり、眼圧下降以外の治療法の開発が重要だと考えられている。
41種の食品成分の中から抗酸化作用を有する素材を調査
研究グループは、眼圧以外の緑内障へ影響を与える因子として酸化ストレスに着目し、41種の食品成分の中からマウス培養網膜細胞に対して抗酸化作用を有する素材を調査。その結果、みかんの皮に含まれるヘスペリジンが最も高い抗酸化能を持つことを見出したという。
網膜障害を誘導したマウスにヘスペリジンを投与したところ、投与しなかったマウスに比べて、生き残った網膜神経節細胞の数が多いことが判明。これは、酸化ストレスの指標である脂質過酸化物や細胞死を誘導するタンパク質のカルパインの活性化、炎症性サイトカインの発現を抑制することで、神経保護作用を示したためと考えられる。また、ヘスペリジンは網膜障害により生じる脳波の減弱や視力低下を防ぐことが電気生理実験や行動学的評価から明らかになったという。
今回の研究結果により、ヘスペリジンには網膜神経節細胞を保護する効果があることがわかった。また、ヘスペリジンは食品素材であることから、サプリメント等で内服することにより、緑内障性の網膜神経節細胞障害を軽減させる可能性があることが示された、と研究グループは述べている。
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・東北大学 プレスリリース