喫煙が主要なリスク因子のひとつである大動脈疾患
筑波大学は7月31日、受動喫煙によって大動脈疾患(大動脈解離・大動脈瘤)による死亡が増加することを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学医療系の山岸良匡准教授、磯博康客員教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米専門誌「Atherosclerosis」オンライン版に公開されている。
画像はリリースより
受動喫煙は、肺がんや心筋梗塞、脳卒中などのリスク因子であることがわかっている。また、大動脈疾患は喫煙が主要なリスク因子のひとつであることから、受動喫煙においても大動脈疾患との関連が疑われていた。しかし、受動喫煙に関する研究は少なく、大動脈疾患との関連ついては明らかにされていなかった。
家庭内より、家庭外での受動喫煙の影響が強い結果に
研究グループは、多施設共同研究として参加している大規模地域コホート研究「JACC Study」で、受動喫煙の程度を質問紙によって調査。計4万8,677人の研究参加者を平均16年間にわたって追跡した。その結果、受動喫煙の程度が低い群と比較した、受動喫煙の程度が高い群の大動脈疾患死亡多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は2.35(1.09-5.09)であり、統計学的にも有意な関連が認められた。
また、受動喫煙の程度を家庭外と家庭内に分けて分析すると、家庭内での受動喫煙の影響よりも、家庭外での受動喫煙の影響が強い結果だった。家庭外での受動喫煙とは、主に職場や飲食店での受動喫煙であることから、家庭内よりも多くの喫煙者の煙にさらされると考えられ、今回の結果の違いにつながった可能性が示唆されるという。
今回の研究成果により、受動喫煙が人体へ与える悪影響がまたひとつ明らかになり、受動喫煙対策の重要性がより明確になった。この研究を機に、受動喫煙の有害性についての認識が国民の中で広まることが期待される、と研究グループは述べている。
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