患者自身の膝の中にある滑膜から滑膜幹細胞を分離・培養
東京医科歯科大学は7月27日、半月板損傷に対する自家培養滑膜幹細胞移植の医師主導治験を2017年8月から開始すると発表した。同大統合研究機構再生医療研究センターの関矢一郎教授、清水則夫准教授、同大大学院運動器外科学分野の宗田大名誉教授、古賀英之准教授を中心とした共同研究の成果によるもの。
画像はリリースより
この治験では、患者自身の膝の中にある滑膜から滑膜幹細胞を分離・培養して再生医療等製品(治験製品)を製造。半月板の再生医療の安全性や効果を調べるという。一般的に縫合の適応となる半月板の断裂に対しては、損傷部の断端をしっかり合わせて強く縫合するが、縫合術の適応とならない断裂に対して、強い縫合を行うと再断裂が生じる可能性があるため、比較的弱い張力で縫合することにより、半月板の形を整え修復する「形成的修復術」を行い、そこに細胞を移植することで、半月板の治癒を促進させ、臨床症状が改善することを期待する。
経過観察、MRIなどの検査で有効性・安全性を探索的に確認
今回の治験は非盲検単群試験であるため、すべての研究参加者に同一の治験療法を行う。治験療法では、あらかじめ、培養液添加用の血清を得るために、約300gの血液を採取した後に半月板形成的修復術を行い、その約2週間後に自家滑膜幹細胞(治験製品)を移植。半月板形成的修復術後52週間の経過観察、および、MRI検査、関節鏡検査を含む検査により、有効性と安全性を探索的に確認する。この治験の結果を受けて、今後、再生医療等製品としての承認を目指すという。
日本では半月板手術の80%が切除術であり、変形性膝関節症の高リスク群となっている。研究グループは、低侵襲手術と細胞移植を組み合わせた革新的な新規治療法として、一般的には半月板切除術の適応となる半月板損傷に対して縫合術を行い、その際に、採取した膝関節内の滑膜から細胞を分離し、生体外で培養拡大後、再び、半月板に移植する医療技術を開発。2013年12月には、世界で初めて「半月板損傷を対象とした自家培養滑膜幹細胞移植」の臨床研究を開始し、2015年4月までに5例の臨床研究を実施。これら5例の術後2年経過において、重篤な有害事象を認めず、全例において、臨床スコアの改善を認めた。これらの成果をもとに2017年3月27日に医薬品医療機器総合機構に治験届「自家滑膜幹細胞の半月板損傷を対象とする医師主導治験」を提出していた。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース