がん種を問わず予後不良な標準治療に抵抗性の難治性小児悪性固形腫瘍
東京医科歯科大学は7月27日、難治性小児悪性固形腫瘍患者を対象にPARP阻害剤「オラパリブ錠」の安全性および忍容性を評価し、第2相試験の推奨用量を決定する医師主導治験(第1相試験)を開始すると発表した。この治験は、同大医学部附属病院・大学院医歯学総合研究科茨城県小児周産期地域医療学講座の高木正稔准教授らのグループが、国立がん研究センター中央病院と共同で行うもので、日本医療研究開発機構(AMED)臨床研究・治験推進研究事業の支援と、アストラゼネカ株式会社からの治療薬の提供を受けて実施される。
オラパリブは、DNA損傷応答(DDR)経路に異常をきたしたがん細胞に特異的に作用し、細胞死を誘導するPARP阻害剤。EU、米規制当局により「BRCA遺伝子変異陽性卵巣がん」の治療薬として承認されている。国内では未承認。
標準治療に抵抗性の難治性小児悪性固形腫瘍の予後はがん種を問わず不良で、長期生存はほとんど期待できない。そのため、幅広いがん種に効果が期待できる新規薬剤の開発が重要だ。高木准教授らの研究グループは、難治性小児悪性固形腫瘍の神経芽腫の約半数にDNA損傷修復応答機構にかかわる遺伝子異常を認め、オラパリブが有用である可能性を発見。今回の医師主導治験開始に至ったという。
2種類以上の化学療法レジメンを行った後に腫瘍が残存する患者が対象
今回の治験対象は、3~18歳の小児悪性固形腫瘍のうち、2種類以上の化学療法レジメンを行った後に腫瘍が残存する患者(造血器腫瘍、脳腫瘍は除く)。治験薬は錠剤のため、錠剤を飲める人が対象となる。募集期間は、2017年6月から予定人数に達するまでで、予定人数は最大18人。参加方法は、医療機関からの紹介となる。治験に関わる薬剤費負担はなく、一般診療にかかる費用は保険診療となる。
研究グループは、同治験結果によって小児に対するオラパリブの安全性を確認し、有用性を検討するための第2相治験実施へとつなげ、小児難治性固形腫瘍に有効な新規治療法が提供されることが期待される、と述べている。
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