採取時の侵襲性が比較的低く、入手も容易な脂肪組織
新潟大学とロート製薬株式会社は7月27日、日本初の肝硬変を対象とした他家脂肪組織由来幹細胞製剤「ADR-001」の治験を開始すると発表した。
ADR-001は、ロート製薬が開発を進めている他家脂肪組織由来幹細胞を構成細胞とする細胞製剤。脂肪組織に含まれる幹細胞を動物由来原料不含有で、独自の無血清培地で培養している。脂肪組織は組織中に多くの間葉系幹細胞を含み、採取時の侵襲性が比較的低い。手術時など余剰組織となるケースもあることから、入手が比較的容易であり、他家脂肪細胞による同種移植のため、必要な患者に迅速に提供できるメリットがある。投与は静脈内点滴投与なので、患者の負担が少ないことも特徴だ。
治験実施期間は2018年12月までを予定、2020年度の承認を目指す
肝硬変の特徴である肝線維化の改善は、コラーゲンをはじめとした細胞外基質の溶解、肝星細胞の活性化抑制、炎症反応の抑制、肝障害の抑制に有効と考えられている。間葉系幹細胞を用いた治療効果は、細胞が産生するサイトカインや成長因子等の液性因子を介して治療効果を発揮すると考えられており、ADR-001の構成細胞を用いたマウス肝硬変モデル、マウス非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルでの検討で、肝線維化の改善が認められたという。
今回の第1/2相臨床試験の対象疾患は、C型肝炎またはNASHによる非代償性肝硬変(Child Pugh分類・グレードB)患者で、目標症例数は15例。治験責任医師は、同大大学院医歯学総合研究科の寺井崇二教授が務め、新潟大学医歯学総合病院で実施される。治験実施期間は、2017年7月から2018年12月までを予定。同社は、2020年度の承認を目指すとしている。
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・新潟大学 研究成果