ADK発現レベルによって規定されるリバビリンの抗HCV活性
岡山大学は7月21日、C型慢性肝炎治療薬「リバビリン」が脂質生合成を抑制する機能を発見し、その分子機序について解明したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科腫瘍ウイルス学分野の佐藤伸哉助教、加藤宣之教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米肝臓学専門オンライン誌「Hepatology Communications」に掲載されている。
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同分野研究室のこれまでの研究から、リバビリンの抗C型肝炎ウイルス(HCV)活性は、リバビリンをモノリン酸化するアデノシンキナーゼ(ADK)の発現レベルによって規定されることが明らかになっていた。一方、ADKのノックアウトマウスは生後すぐ致死性の脂肪肝を発症することも報告されていた。これらの結果から、研究グループはリバビリンには抗HCV活性の他に、脂質代謝経路に対する作用があるのではないかと考え、研究を開始したという。
HCV排除後の肝発がん予防、非ウイルス性の肝がん発症への予防薬として期待
今回の研究では、ADKを発現させた肝細胞株を作成し、それを用いてリバビリンの機能解析を実施。その結果、リバビリンが脂質生合成に関与する遺伝子の発現レベルを低下させ、中性脂質の量も低下させることがわかった。さらに、その分子機序の解析を行った結果、リバビリンによる細胞内GTPの枯渇、AMPK関連キナーゼのひとつであるMARK4による核内受容体RXRαの発現レベルの低下が起こり、最終的に脂質生合成が抑制されることが判明したという。
脂質生合成の亢進は、HCVの増殖を高めるだけでなく、C型慢性肝炎に伴う脂肪肝や肝がんの発症におけるリスクファクターとなる。脂質生合成に対する抑制機能を持つリバビリンは、HCV排除後の肝発がん予防や、近年増加傾向の非ウイルス性肝がん発症に対する予防薬として有用であると考えられる。また、リバビリンの脂質生合成抑制に関わる宿主因子が明らかになったことから、そのような因子に作用する、貧血などの副作用の少ない肝発がん予防薬の開発など今後の展開も期待される、と研究グループは述べている。
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