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脂質キナーゼPI3K p85α、炎症性腸疾患の新たな治療標的となる可能性-富山大

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2017年07月26日 PM01:30

PI3K p85αがIL-10の生産に抑制的に関与

富山大学は7月21日、腸管マクロファージにおけるインターロイキン-10の産生に脂質キナーゼ「PI3K p85α」が抑制的に関与し、PI3K p85αを欠損した腸管マクロファージではインターロイキン-10の産生が亢進し、炎症性腸疾患の病態が改善されることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大和漢医薬学総合研究所消化管生理学分野の林周作助教、門脇真教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)は、病因不明の慢性炎症疾患で、厚生労働省の指定難病のひとつにもなっている。現在、IBDの治療には、ステロイドや炎症性サイトカインであるTNF-αに対する抗体医薬等が使用されているが、IBDの最も重篤な合併症である炎症関連大腸発がんを防ぐための長期寛解維持に有用な薬剤はない。

IL-10産生を亢進させる薬物がIBDの新規治療薬となる可能性

研究グループは、腸管粘膜免疫系での恒常性維持に中心的な役割を担う腸管マクロファージに着目。これまでに脂質キナーゼPI3K p85αは、マクロファージの機能制御に関与することが報告されており、今回研究グループは、PI3K p85αを欠損した遺伝子改変マウスを用いた研究を行った。

その結果、PI3K p85αを欠損した腸管マクロファージでは、抗炎症性サイトカインのインターロイキン-10()の産生能が通常の腸管マクロファージに比べて著しく上昇。PI3K p85α欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、IBDモデルでの発症が顕著に抑制されることを判明した。IL-10を高産生する(PI3K p85α欠損)マクロファージを細胞移入した野生型マウスを用いたIBDモデルでは、発症が抑制されることも見出したという。

今回の研究成果により、IL-10を高産生する腸管マクロファージがIBD病態を改善し、腸管マクロファージでのIL-10の産生を亢進させることは、IBDに対する新たな治療戦略として有用である可能性が示唆された。PI3K p85α特異的阻害薬のような腸管マクロファージのIL-10産生を亢進させる薬物がIBDの新規治療薬となる可能性が期待される、と研究グループは述べている。

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