■研修の「目的化」には懸念
厚生労働省医薬・生活衛生局総務課の紀平哲也薬事企画官は、特定領域の知識・技能を習得した薬剤師を認定する「認定薬剤師制度」や、専門領域に精通した薬剤師を認定する「専門薬剤師制度」が数多く存在している状況について、「それぞれがきちんとした制度になっていれば悪いものとは思わない」との認識を示す一方で、「シールだけを集める」など、単に学会に参加したり、研修を受けることが「目的化してしまう」ことを問題視。今後の認定制度には、「単なる学習の成果ではなく、どのような患者アウトカムにつながるか」といったエビデンスが「求められるようになる」との考えを示した。
薬事日報の調査によると、認定薬剤師制度は28団体35種類、専門薬剤師制度は6団体10種類に上り、計45種類にも及ぶことが分かっている。薬剤師の活動範囲の広がりに伴い、多くの専門・認定薬剤師制度が立ち上がったことで、乱立状態の実態が浮き彫りとなったものの、質の担保を懸念する声も上がっている。
日本学術会議は2008年、専門薬剤師制度について、「質の保証には、第三者評価機関により保証された研修・認定の仕組みが不可欠」と提言。14年には厚生労働科学研究班が、専門薬剤師制度を整備するための指針をまとめたが、指針の遵守がどれだけ徹底されているかは不透明なのが現状だ。
紀平氏は、「専門・認定薬剤師と呼ばれるものが、数多く存在したとしても、それぞれがきちんとした制度になっていれば悪いものとだは思わない」としつつも、「問題は研修を受けることが目的化してしまうこと」と指摘。
仮に、「多くの薬剤師が“自分たちはこれだけ頑張ったのだから何かしらの形で認めてほしい”というマインドを持っているとしたら、認定制度とは何のためのものか考え直す必要があるだろう」との認識を示した。
研修や自己研鑽の目的については、「自らの知識・技能をよりレベルアップさせるためのものと受け取られがちだが、より良い薬物治療を患者さんに提供するということ」との認識を示し、「この原点に立ち返る必要がある」と強調した。
また、「患者目線で仕事をしていれば、研修や自己研鑽は、必ず必要になる」との認識を示した上で、「決して自分たちの満足のためにやることではないし、単に学会に参加してシールだけ集めればいいものでもない」と指摘。
これからの専門・認定制度には、「単なる学習の成果までではなく、どのような患者アウトカムにつながるかという視点が求められてくる」とした。
専門・認定制度を運営する学会や団体に対しては、「認定を取得したことで、患者の薬物管理がこれだけ向上した」などのエビデンスを示していくことが「認定制度の価値を高めていくことにつながるのでは」とアドバイスを送った。