統合失調症患者で認められる内発的動機づけの障害
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は7月21日、脳画像解析によって、統合失調症における内発的動機づけ障害に、外側前頭前野の脳活動の異常が関与することを初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同センター病院第二精神診療部竹田和良医師と、精神保健研究所の中込和幸所長らのグループが、玉川大学脳科学研究所松元健二教授ら、同センター脳病態統合イメージングセンター(IBIC)花川隆部長ら、東京都健康長寿医療センター放射線診断科下地啓五専門部長らと共同で行ったもの。研究の成果は「NeuroImage:clinical」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
内発的動機づけとは、取り組んでいる課題や活動そのものによって引き起こされる興味・関心・意欲によって生じる動機づけのこと。統合失調症では、各個人の内的価値に基づいた内発的動機づけが障害されていることが知られているが、それがどのようなメカニズムで生じるのか、その詳細は不明だった。
脳活動をfMRIで計測。行動指標とともに比較解析
今回、研究グループは、ストップウォッチ(SW)とウォッチストップ(WS)という課題中の脳活動を機能的磁気共鳴画像撮影法(fMRI)で計測。行動指標とともに患者群、健常群で比較解析した。その結果、統合失調症患者では、外側前頭前野の脳活動異常により、内発的動機づけを適切な行動を行うための認知的制御に結びつけることができなくなっていることが判明したという。
今回の研究では、統合失調症における内発的動機づけ障害に、内発的動機づけを今必要とする目的行動に適切に結びつける外側前頭前野の脳活動の異常が関与していることが初めて発見された。今後、このような外側前頭前野の脳活動異常を治療することができれば、統合失調症の社会機能の向上が一層得られると期待できるという。
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・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース