CMV感染症の妊婦スクリーニング法の問題点が判明
神戸大学は7月21日、これまでは妊娠中に初感染した母体から多く生じると考えられていた先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染児が、妊娠中に初感染を起こした妊婦よりも慢性感染状態の妊婦から多く発生していることがわかったと発表した。この研究は、同大医学研究科産科婦人科学分野の山田秀人教授ら、愛泉会日南病院疾病制御研究所の研究グループによるもの。研究成果は、米科学雑誌「Clinical Infectious Diseases」に掲載された。
画像はリリースより
CMVは胎児感染を起こし、乳幼児に難聴、精神や運動の発達障害などの後遺症を残す原因となる病原体。日本では、年間1,000人の先天性感染症児が生まれていると推定される。しかし、現在、有効なワクチンや胎児・新生児に対する治療法がないことから、全妊婦対象の血液検査などによる先天性CMV感染のスクリーニングは、世界的にみても推奨されていない。一方で近年、先天性CMV感染による症候性感染症児に対し、早期に抗ウイルス薬で治療を行うことで、難聴や精神発達の遅れが改善できることが明らかになってきた。
世界で初めて、CMV IgGアビディティー検査を全妊婦に実施
今回の研究では、神戸大学を受診した妊婦のうち、もともと先天性CMV感染発生のハイリスクであるCMV IgM抗体陽性を理由とした紹介例や他施設で分娩した妊婦を除く2,193人を解析対象とした。一般的に用いられている抗CMV免疫グロブリン(Ig)M抗体検査よりも初感染の診断精度が高いとされるIgGアビディティー検査を用いたスクリーニング法を、全妊婦を対象に世界で初めて実施。先天性感染の発生予測の有用性を検証したが、従来のIgM検査を用いたスクリーニング法と予測効率は同等であったという。
また、妊娠中に初感染を起こした妊婦よりも、慢性感染状態の妊婦から先天性CMV感染児が多く発生していることが判明。この結果から、妊娠中に初感染を起こした妊婦を見つけ出そうとする今までの血清学検査では、罹患児の見落としが多く出てしまう危険性があると考えられるという。
今回の結果をもとに、見落としの無い先天性CMV感染のスクリーニング法を開発・導入することで、罹患児を早期に発見・治療することが可能となる、と研究グループは述べている。
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