同院は2013年から薬剤師外来を開始し、14年から経口抗癌剤S-1を服用する患者を対象に加えている。調査では、14年11月から16年3月に同院でS-1による胃がん術後補助化学療法を実施し、薬剤師が外来で介入した患者40人を薬剤師外来群に設定。薬剤師外来を実施前の12年9月から14年10月に術後補助化学療法が実施された患者94人をコントロール群とし、両群の治療完遂率などを比較した。
その結果、コントロール群では94人中37人(39.4%)が治療を完遂し、57人(60.6%)が治療中止となった。中止理由と人数は「再発」が24人(25.5%)、「副作用」が30人(31.9%)などとなった。再発症例を除くと治療完遂率は55.2%だった。
一方、薬剤師外来群では40人中33人(82.5%)が治療を完遂し、7人(17.5%)が治療中止となった。中止理由と人数は「再発」が4人(10.0%)、「副作用」が3人(7.5%)。再発症例を除くと治療完遂率は91.7%となった。
薬剤師による介入前は、疲労、食欲不振、下痢、口内炎、悪心など副作用を理由とする治療中止が全体の31.9%を占めていたが、薬剤師外来の実施によって副作用による離脱が7.5%に低下し、それが治療完遂率の向上につながったと考えられている。
薬剤師は、外来で医師の診察前に5~30分ほど患者に面談し、服薬アドヒアランスの評価、副作用モニタリング、副作用対策の指導などを実施。その上で、医師に対して、投与量や投与方法、副作用対策の支持療法に関する処方提案を行っている。薬剤師外来群の面談回数は合計644回。そのうち67回で計214件の処方提案を行い、受託率は92.5%だった。
投与初期に重点的に患者指導、投与量の設定、休薬や支持療法に関する支援を行ったことが効果的だったという。このほか、体重が低下する患者では副作用が発現しやすいため、栄養剤の追加を提案して体重減少を抑えたり、当初は低い投与量で開始して途中から増量したりするなど、きめ細かく対応したことも治療完遂率の向上を後押ししたとしている。
薬剤師外来群でS-1術後補助化学療法を完遂できた患者の相対用量強度(RDI)は70%以上に達しており、治療効果も期待できるという。