一般市民520名、研究者105名が回答した意識調査より
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は7月20日、国内の一般市民および研究者を対象とした「ヒト−動物キメラ胚の作製に関する意識調査」の結果を発表した。この研究は、CiRA上廣倫理研究部門の澤井努研究員、八田太一研究員、藤田みさお准教授らによるもの。この研究成果は、米科学誌「STEM CELLS Translational Medicine」オンラインに掲載された。
画像はリリースより
この意識調査は、2016年2月から4月の間に、一般市民520名、研究者105名から回答を得たもの。その結果、ヒト−動物キメラ胚の作製に関しては一般市民の80.1%、研究者の92.4%が、またヒト−動物キメラ作製については一般市民の64.4%、研究者の83.8%が「許容する」という結果が得られた。これらの結果は、2017年3月に、すでに論文発表されている。
脳、精子・卵子で、より懸念
これまでに、ヒト−動物キメラ研究に関する倫理的問題として、ヒトの細胞が動物の脳に含まれると、ヒト−動物キメラがヒトと同等の認知機能を有するのではないかという点、また、動物の生殖細胞の系列にヒトの細胞が含まれると、ヒトと動物のハイブリッドや動物からヒトが生まれてしまうのではないかという点がについて、議論されてきていた。
そこで、研究グループは意識調査にて、脳、肝臓、精子・卵子、皮膚、血液、心臓という6つの臓器、組織、細胞について、動物にヒトの細胞が含まれることに対する抵抗感について尋ねた。その結果、一般市民も研究者もともに、他の臓器、組織、細胞に比べて、脳、精子・卵子にヒトの細胞が含まれることをより懸念することが明らかになったという。
さらに、臓器別にどの程度であればヒトの細胞が含まれることを許容するかについては、48.5%の一般市民、45.7%の研究者が「脳にヒトの細胞が寄与することは全く許容されない」と回答。次いで、52.1%の一般市民、74.3%の研究者が「生殖細胞にヒトの細胞が寄与することは全く許容されない」と回答した。
今回の調査結果について研究グループは、「ヒト-動物キメラ研究における脳、配偶子のヒト化の問題に関しては、少なくとも当該問題を回避する方策を探究する必要性を示している」と述べている。
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