骨髄異形成症候群患者における血液細胞の供給能力低下に着目
九州大学は7月18日、骨髄異形成症候群患者の造血幹細胞でタンパク質「FBXL5」の量が減少すると、造血幹細胞に鉄がたまり、血液細胞を作る能力が低下することを見出したと発表した。この研究は、同大生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授、西山正章助教、武藤義治研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学雑誌「Nature Communications」で公開されている。
画像はリリースより
正常な血液細胞が作られなくなる骨髄異形成症候群では、造血幹細胞における血液細胞を供給する能力が低下し、一部の患者では急性骨髄性白血病に移行することが知られている。また、骨髄異形成症候群の患者では身体に鉄がたまりやすく、それが血液細胞を供給する能力の低下をさらに悪化させていることが報告されていたが、具体的なメカニズムは不明だった。
FBXL5欠失マウス造血幹細胞ではタンパク質「IRP2」が蓄積
研究グループは、以前にFBXL5が体内の鉄量を制御することを世界にさきがけて発見し、その研究をリードしてきた。今回は、骨髄異形成症候群の患者で、造血幹細胞のFBXL5の量が低下していること、FBXL5が欠失したマウス造血幹細胞ではIRP2というタンパク質が蓄積して、鉄がたまって強力な酸化ストレスを生じ、その結果として血液細胞を供給する能力が低下することを発見したという。
これらの結果は、造血幹細胞においてIRP2を抑制することにより過剰な鉄を減らすことで、骨髄異形成症候群が治療できる可能性を示すもの。また、造血幹細胞でFBXL5を欠損したマウスは、鉄の過剰を伴う血液の病気のモデル動物になると考えられる。今後は、このモデルマウスを用いて、骨髄異形成症候群などの血液の病気の発症メカニズムを解明するとともに、治療薬剤の探索を行うことで、治療への応用を目指していきたいとしている。
▼関連リンク
・九州大学 プレスリリース