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グリオーマのがん幹細胞に対する創薬標的分子PTPRZを同定-NIBB

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2017年07月20日 PM01:30

治療成績が改善していないグリオブラストーマ

(NIBB)は7月17日、)が抗がん剤に耐性となる原因とされる「がん幹細胞性」の維持に、チロシンホスファターゼのひとつである「」という酵素が関わることを同定し、PTPRZに対してアロステリックな阻害作用を有する化合物を見出したと発表した。この研究は、同研究所・統合神経生物学研究部門の藤川顕寛研究員、野田昌晴教授と、アスビオファーマ株式会社が共同で行ったもの。研究成果は、英オンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより

)は、脳に存在しているグリア細胞に由来する腫瘍。もっとも悪性なグリオーマであるグリオブラストーマは、確定診断後の平均余命が約14か月と言われている。グリオブラストーマ細胞は、正常な脳組織内に深く入り込んでいるため、手術によって完全に取り除くことが困難であり、手術後も放射線と抗がん剤による治療が継続されるが、治療成績は長い間改善していない。

これまで、がん領域で開発された分子標的薬の多くは、細胞のがん化に密接に関係しているタンパク質のチロシンリン酸化を担うプロテインチロシンキナーゼ(PTK)ファミリーを標的とするものだった。しかし、これらPTKファミリー分子に対する阻害薬だけでがん治療を行うことは難しく、新たな創薬標的を見つける必要があることがわかってきていた。

」とテモゾロミドの併用投与で抗腫瘍効果が有意に増強

基生研・統合神経生物学研究部門では、長年、PTKファミリーと対をなすチロシンリン酸化の制御分子、プロテインチロシンホスファターゼ(PTP)ファミリー分子の生理的役割やその分子機構機能について研究しており、同部門とアスビオファーマの共同チームは、PTPの1つであるPTPRZの酵素活性が、グリオブラストーマ細胞株の高い細胞増殖能や細胞浸潤能に関わることを2016年に報告している。

今回の研究は、グリオブラストーマ細胞のがん幹細胞性に対する、PTPRZの機能阻害の有効性を明らかにすることを目的として実施された。その結果、がん幹細胞性の維持にPTPRZが関わることを明らかにし、さらにPTPRZに対してアロステリックな阻害作用を有する化合物「NAZ2329」を見出した。NAZ2329は、がん幹細胞性の指標である細胞スフィアの形成を阻害すること、動物実験においてNAZ2329と抗がん剤テモゾロミドを併用投与することで、抗腫瘍効果が有意に増強されることを明らかにしたという。

PTPRZは、グリオブラストーマだけでなく、多くのがん細胞で発現が上昇していることが知られている。藤川氏は今後、NAZ2329をベースにして、より医薬品開発に適した創薬シード化合物の創出を目指すことを計画しており、この化合物を解析ツールとして活用し、グリオーマ以外の疾病におけるPTPRZの役割についても明らかにしていく予定としている。

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