■同時改定議論に付加価値
厚生労働省の鈴木康裕医務技監は13日、就任後初めて専門紙と共同会見し、省内や国境など「三つの境」を超えることが重要と自身の役割を明示。「調和され一括した医療政策の遂行、国民の健康危機管理に注力していきたい」と抱負を語った。また、団塊世代が75歳以上となる“2025年問題”も目前の大きな課題との認識を示し、「来年度の同時改定は第一歩。財源はおそらく薬価しかない。それを医療、介護等にどう配分するかが課題」と指摘。改定作業の基本は各局としつつ、「(医務技監として)相乗的、相加的な付加価値のある議論をきちんとやっていきたい」と語った。
鈴木氏は、就任に当たって「厚労省には様々な課題があるが、それぞれ局長がいる中で屋上屋を架すことは良くない。医務技監がいるからこその付加価値を皆さんに感じていただけることが一番だと思うので、なるべく早く実現するよう頑張りたい」と抱負を語った。
その上で、具体的に取り組む課題として、省内各局と課の境、他省庁との境、国の境の「三つの境」を超えることが大事との認識を示し、がんゲノム医療を例に、「国民のために前進させていくためには、調和された一括した方針が必要。それを担当部局と相談しながらやっていきたい」と述べた。
また、医務技監として取り組んでいく大きな課題に「2025年問題」を挙げた。「団塊世代が75歳を超える医療・介護のニーズがピークに達するまであと8年しかない。その時の急速なニーズ増にどう備えるかということが行政官にとって一番の目前の課題」と指摘。「同時にピークを迎えた後、急速にニーズが減る状況にも備えなければならない難しいオペレーションを迫られるので、そこを部局横断的に乗り切ることが大事」との考えを示した。
来年の診療報酬・介護報酬の同時改定をめぐっては、「基本的には局長以下、しっかり各局で対応していただくことが大前提」としながらも、「議論に屋上屋を架すのではなく、相乗的、相加的にどういう付加価値をつけることができるかだと思う」と医務技監の役割を明示した。同時改定の予算編成の見通しについても言及。「おそらく財源は薬価改定しかない。それを医療、介護などにどう配分するか、きちんと議論したい」と語った。
また、医薬品産業についても見解を披露し、「担税能力から見ても非常に重要な産業。きちんとイノベーションに報いないと、金の卵を産むニワトリを殺してしまうことになりかねない」と発言。今後、中所得層の人口増が見込まれるアジアが主戦場になるとの見方を示し、「がんゲノム医療などで、アジアの人たちに有効な薬を日本発で作っていくことが非常に大事。重要な産業として日本の企業をどう支えるかは厚労省にとって大きな課題」との認識を示した。
医務技監は、新たに設置された医系技官の次官級ポスト。医療・保健に関する重要政策について専門的観点から「統理」し、医療政策や国際保健外交の司令塔として、健康危機管理や薬剤耐性問題、高齢化対策などにも対応すると位置づけられている。