「生体内修復幹細胞」としての可能性が明らかになってきたMuse細胞
東北大学は7月13日、ヒトMuse細胞を慢性腎臓病モデルマウスに静脈投与すると、腎組織が修復され腎機能が回復することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科細胞組織学分野の出澤真理教授の研究グループが、日本大学医学部およびカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究グループと共同で行ったもの。研究成果は「Journal of the American Society of Nephrology」に掲載されている。
画像はリリースより
Muse細胞は発見当初、骨髄や皮膚に存在する腫瘍化の可能性がほとんどない多能性幹細胞として位置付けられていたが、ヒトの身体の修復を行う「生体内修復幹細胞」としての可能性が明らかになってきた。静脈投与で傷害組織に集積し、その組織に応じた細胞に自発的に分化することで組織を修復することが知られている。
慢性腎臓病をMuse細胞の点滴投与で治療できる可能性
研究グループは、ヒト細胞を拒絶しない免疫不全マウスにおいて薬剤投与によって慢性腎臓病モデルを作成。ヒト骨髄由来のMuse細胞を静脈投与したところ、傷害を受けた腎臓の濾過器官(糸球体)に選択的に生着し、自発的に糸球体を構成する細胞として分化した。糸球体構成細胞に分化したMuse細胞は投与後7週においても腎臓内で生存し、腎機能を改善したという。その一方、免疫機能が正常なマウスモデルで免疫抑制剤を投与せずに同様の実験を行ったところ、ヒトMuse細胞は5週までは分化・生存し、顕著な腎機能の回復を示したが、7週後になると排除され、腎機能も悪化したことから、Muse細胞が糸球体構成細胞として生着していることが腎機能回復に直接寄与していることが示された。
今回の研究成果により、Muse細胞の点滴投与で慢性腎臓病を修復再生できること、またドナーのMuse細胞が長期間にわたってレシピエントの体内に残り、回復効果をもたらす可能性が示唆された。また、これまで再生医療は、コストと時間がかかるハードルの高いものというイメージがあったが、Muse細胞の点滴による再生医療が可能になれば、大きく一般普及し、現在の医療を大きく変える可能性がある、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース