医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 遺伝性乳がん・卵巣がん抑制遺伝子BRCA1の動きを助けるタンパク質「SCAI」を発見-阪大

遺伝性乳がん・卵巣がん抑制遺伝子BRCA1の動きを助けるタンパク質「SCAI」を発見-阪大

読了時間:約 1分12秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2017年07月18日 PM01:00

・卵巣がんを引き起こすBRCA1変異

大阪大学は7月12日、遺伝性乳がん、卵巣がんを抑制する遺伝子「」の働きを助けるタンパク質「」を発見したと発表した。この研究は、同大大学院理学研究科の小布施力史教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際雑誌「Cell Reports」のオンライン版で公開された。


画像はリリースより

DNA損傷の蓄積は、がんや老化を引き起こしやすくするが、生物は、損傷したDNAを修復するさまざまな仕組みを備えている。BRCA1は、DNA修復に関わる遺伝子のひとつ。BRCA1が適切に働かないと、乳がんや卵巣がんが引き起こされることが知られている。医療現場では、がんの発症前診断に利用され、BRCA1変異で生じたがんに効果的な抗がん剤も作られているが、BRCA1そのものを制御するメカニズムは、未だ未解明な部分が多い。

SCAIが働かないと、BRCA1はDNAを適切に修復できず

研究グループは、SCAIの機能を調べるために、BRCA1変異によるがんに効く抗がん剤を用いた実験を行った。その結果、SCAIを人工的に働かないようにした細胞は、抗がん剤の影響を受けやすくなったという。このことから、SCAIが働かないことに連動して、BRCA1がDNAを適切に修復できなくなることが判明した。

さらに、高解像度レーザー顕微鏡で詳細な観察を行った結果、SCAIはDNAの二本鎖切断箇所に集まり、BRCA1を邪魔するタンパク質「」の機能を抑えることによって、間接的にBRCA1の働きを助けていることが判明。SCAIの有無によって、BRCA1の働きがコントロールされていると考えられるとしている。

今後、SCAIが詳しく解析されれば、BRCA1変異によるがん発生のメカニズムの理解が進み、発症前診断やより効果の高い予防薬、がん治療法の開発につながることが期待される、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 加齢による認知機能低下、ミノサイクリンで予防の可能性-都医学研ほか
  • EBV感染、CAEBV対象ルキソリチニブの医師主導治験で22%完全奏効-科学大ほか
  • 若年層のHTLV-1性感染症例、短い潜伏期間で眼疾患発症-科学大ほか
  • ロボット手術による直腸がん手術、射精・性交機能に対し有益と判明-横浜市大
  • 前立腺がん、治療決定時SDMが患者の治療後「後悔」低減に関連-北大