乳がん・卵巣がんを引き起こすBRCA1変異
大阪大学は7月12日、遺伝性乳がん、卵巣がんを抑制する遺伝子「BRCA1」の働きを助けるタンパク質「SCAI」を発見したと発表した。この研究は、同大大学院理学研究科の小布施力史教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際雑誌「Cell Reports」のオンライン版で公開された。
画像はリリースより
DNA損傷の蓄積は、がんや老化を引き起こしやすくするが、生物は、損傷したDNAを修復するさまざまな仕組みを備えている。BRCA1は、DNA修復に関わる遺伝子のひとつ。BRCA1が適切に働かないと、乳がんや卵巣がんが引き起こされることが知られている。医療現場では、がんの発症前診断に利用され、BRCA1変異で生じたがんに効果的な抗がん剤も作られているが、BRCA1そのものを制御するメカニズムは、未だ未解明な部分が多い。
SCAIが働かないと、BRCA1はDNAを適切に修復できず
研究グループは、SCAIの機能を調べるために、BRCA1変異によるがんに効く抗がん剤を用いた実験を行った。その結果、SCAIを人工的に働かないようにした細胞は、抗がん剤の影響を受けやすくなったという。このことから、SCAIが働かないことに連動して、BRCA1がDNAを適切に修復できなくなることが判明した。
さらに、高解像度レーザー顕微鏡で詳細な観察を行った結果、SCAIはDNAの二本鎖切断箇所に集まり、BRCA1を邪魔するタンパク質「RIF1」の機能を抑えることによって、間接的にBRCA1の働きを助けていることが判明。SCAIの有無によって、BRCA1の働きがコントロールされていると考えられるとしている。
今後、SCAIが詳しく解析されれば、BRCA1変異によるがん発生のメカニズムの理解が進み、発症前診断やより効果の高い予防薬、がん治療法の開発につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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