アトピー性皮膚炎患者1万300名を対象とした調査より
サノフィ株式会社は7月12日、アトピー性皮膚炎に関するメディアセミナーを開催。日本医科大学千葉北総病院皮膚科部長の幸野健氏が講演し、サノフィ社が実施したアトピー性皮膚炎患者の自己意識調査結果に基づき、アトピー性皮膚炎治療における医師と患者のコミュニケーションの重要性について語った。
日本医科大学千葉北総病院 皮膚科部長 幸野健氏
同調査は、2016年5月26日~6月2日の期間中、15~69歳のアトピー性皮膚炎患者の男女1万300名を対象にインターネット調査として実施された。調査の結果、アトピー性皮膚炎治療への満足度について、半数以上(53.8%)が症状の改善効果に満足していると回答。一方、医師とのコミュニケーションに満足している患者は39.7%だった。
診察時間の平均は4.2分で、3分以下が約55%、2分以下が約31%という結果に。医師とのコミュニケーションに不満を感じている患者の平均診察時間は3.5分で、満足している患者の平均診察時間は5分だったという。幸野氏は、「5分以上は患者さんと話さないと、と私は考える。できれば10分とってほしいが、難しい場合は7~8分はとってほしい。そのほうが患者さんとのコミュニケーションが良くなって、治療効果が上がると考えている」と解説した。
さらに、診察の際に医師に「症状による精神的な悩み」を伝えることができている患者の割合は、平均で37.7%、「人生/生活で困っている点」を伝えることができている患者の割合は、平均で50.4%だった。診察時に医師が確認、説明してくれる内容については、「日常生活上のアドバイスをしてくれる」と回答した患者は32.5%、「日常生活で困っている事がないか確認してくれる」と回答した患者は16.5%という結果だった。
幸野氏「患者さんの身体的・精神的状況に合わせた治療を」
2013年に実施された別の国内インターネット調査の結果から、幸野氏は「アトピー性皮膚炎は、健康状態・精神状態・睡眠・労働生産性・日常活動性に大きな結果を及ぼすと考えられる」と語る。そのうえで、「アトピー性皮膚炎の治療満足度を上げるためには、医師と患者さんがコミュニケーションをとれる環境を整え、患者さんの身体的・精神的状況に合わせた治療を行うことが必要」と述べた。
医師と患者のコミュニケーションが重要視される一方で、治療満足度を上げるためにはやはり治療薬の進歩も欠かせない。「治療に対する不安・不満が残っている限り、患者さんの生活の悩み・不安はとけない。新たな治療の選択肢として生物学的製剤が登場しつつあり、症状の改善が期待されているということを、我々は患者さんに伝えていきたい」(幸野氏)
幸野氏は最後に、アトピー性皮膚炎患者の約6割が成人という現状についても触れ、「20年くらい前から、成人のアトピー性皮膚炎が問題になっている。いろいろな説はあるが、社会の複雑性が高まっていることで、アトピー性皮膚炎が悪くなっているのではないか」との見解を示した。
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