毛の幹細胞の維持に関わる17型コラーゲン
北海道大学は7月11日、コラーゲンの一種「17型コラーゲン」が、生物の発生や発がんに重要な役割を果たす「Wntシグナル」と協調することで、発生段階の表皮の厚さを調節していることを発見したと発表した。この研究は、同大並びにお茶の水女子大学、キングス・カレッジ・ロンドン、トリノ大学などの研究グループによるもの。研究成果は、「eLife」に掲載された。
画像はリリースより
皮膚の表層にある表皮は、厚くなりすぎたり薄くなりすぎたりするとバリア機能が損なわれるが、表皮の厚さがどのように調節されるのか、老化に伴って表皮がどう変化するのかについては、未解明な部分が多い。また、17型コラーゲンなどの表皮基底膜関連タンパクが、ヒトの体表に存在する毛の幹細胞の維持に関わっていることが注目されていたが、毛のない皮膚の表皮でどのような役割を果たしているのかについては、わかっていなかった。
表皮の若返りを目指す創薬や皮膚がん予防薬の開発に期待
研究グループは、独自に確立した遺伝子改変マウスや加齢マウスの実験系・培養細胞実験系・数理モデルを用いて、表皮の増殖や17型コラーゲン、その他の表皮基底膜関連タンパクがどのように発現しているのかを評価。その結果、マウスや培養細胞から17型コラーゲンが欠損すると、発生段階の表皮がより活発に増殖することを明らかにした。また、このときWntシグナルの活性が低下していたことが判明した。一方で、17型コラーゲンをもたないマウスの表皮に17型コラーゲンを導入すると、表皮の増殖は抑えられ、Wntシグナルの働きも正常になったという。
さらに、紫外線の当たらない部分の表皮が老化すると、表皮が増殖して分厚くなるとともに、17型コラーゲンの分布が変化することがわかった。一方で、17型コラーゲンを強制的に発現させた表皮では、老化しても表皮は増殖せず、表皮の若返りを示すことが判明したという。
今回の結果によって、表皮の厚さや増殖が17型コラーゲンによって調節される現象と、その仕組みが明らかになった。とくに、加齢による表皮の増殖を17型コラーゲンが抑えるという点から、表皮の若返りを目指す創薬や、皮膚がんの予防薬の開発へとつながることが期待できる、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・北海道大学 プレスリリース